『テーマ館』 第20回テーマ「勘違い」
「ネット小説家の勘違い」 by しのす
ネットサーフィンをしていたら、こんな話を見つけた。
『私は知る人ぞ知るネット小説家篠澄夫だ。
ネット小説家とは、インターネット上に自分のホームページをかまえ、そこで自作の
小説を発表する作家のことだ。
それが職業というわけではない。本業(私はそれこそが副業だと思っているのだが)
があって、小説を書くという行為をしている。
ネット小説家は、金を得るのではなく、名誉と、真の読者を得るのである。
しかし自分の小説がいつか誰かの目に触れて、晴れて出版とかいうことにならないと
も限らない。それがとりあえず私の夢である。
パソコンの前にすわればすぐに小説が書けた。
しかし最近小説が書けなくなった。これは本業が忙しく、しばらくパソコンに向かっ
ていなかったことが原因であろう。
しばらくゆっくりと休養をとればまたすぐに書けるだろう、と思って早1ケ月。
これはまずい。本当のスランプと言える。
せっかくファンたちが私の作品を待ち望んでいるのに、書けないとは申し訳ない。
これはどうにかしなければ。
1日休みをとって、とにかくパソコンの前にすわた。ワープロソフトを立ち上げてみ
たが、2時間真っ白のままだった。私の顔も真っ白、いや真っ青になった。
これは本当にスランプか・・・
生活を変えてみることにした。
まず食事だ。いつもコンビニで買ってきていた夕食を自炊にした。もっと栄養価の高
い物をまず食べなければ。料理が書かれたHPからレシピを印刷して「牛すじカレー」を作った。4時間近くかかったが、できあがると感無量で、ビールもすすんだ。
気がついたら眠ってしまっており、朝になっていた。
で結局その夜は書けなかった。
自炊は時間がとられて小説を書けなくなるということがわかり、またコンビニ弁当の
生活に戻った。
小説が書けないのは、題材がないからかもしれない。
仕事をして家に帰る、このパターンの繰り返しでは、何も発想も思い浮かばない。と
いうわけで帰りに同僚を誘って飲みに出た。同僚は私が誘ったので驚いていた。
居酒屋から始めて、カラオケスナックに流れる。さらに数軒流して、最後にラーメン
で仕上げ。
いつどうやって家に帰り着いたかわからない。気がつくと9時。会社に慌てて電話し
て会社を休んだ。その日1日二日酔いでずっと寝ていた。
で結局書けなかった。
題材がない。それではせっかくインターネットをできる環境なのだからホームページ
で題材を拾って作ればいい。これぞネット小説家の醍醐味かも・・・。
私はどこでもリンクという、どこに飛ぶかわからないリンク集をみつけた。これで飛
んだページの題材で小説を書くことにしよう。
渦巻きをクリックして・・・・。
その先はいきなりのモロ出し写真だった。朝までずっと起きていたが、結局書けなか
った。
もともと文才がなかったのかもしれない。
これだけ書けないということは、才能がないのだ。
私は深刻なスランプに打ちひしがれた。
と、書けなくなってから2ケ月後、他のホームページの掲示板に「スランプの時は何
でもいいから書くこと」と書いてあるのをみつけた。
そうか、何でも良いから書けばいいのだ。
私は目の前の霧がさっと晴れたような気がした。
そして今までのスランプのことを書き出す、と書ける書ける、なんとか小説が書ける
ではないか。私小説になっているが、書けている。
ひさびさに私はその作品をアップした』
ネット小説の99%は屑だと誰かが断言したように、あんた何か勘違いしてないかと
この篠さんに言いたくなる。自分をネット小説家としてえらいんだとでも思っている
のか?ファンがいる?単なる思い過ごしではないのか?
誰が読むかわからない小説を書いて小説家気取りなんて虚しいことだ。
とんでもない勘違いをしているのではないだろうか。
「おじいちゃん、またパソコンに向かっているの?」孫の美樹が話しかけた。
「うむ、わしは小説家じゃからな」実はわしもネット小説家だったのだが・・・。
「自称小説家でしょ」と美樹はきついことを言う。「80にもなってパソコンが使え
るなんて溜助おじいちゃん、すごいよ」
「うむ、わしは小説家じゃからな」堂々と胸を張った。
(投稿日:07月31日(金)22時22分26秒)