侵入者!?  


日も高く昇り、もう1時間ほどで南中しようかというころ…
カカシ第7班のメンバー達はいつものように遅刻してくるカカシを待っていた。
今日はすでに集合時刻から3時間が経過していた。

「いつものことながら遅刻しすぎだってばよ!」
退屈そうにナルトが言う。
しかし心の中では
(ちっ、昨日は暗部の仕事のせいで1時間しか寝てねえってのに。
時間通りに来る気がねえんだったら集合時間もっと遅く指定しろっつーの。
これで遅刻の理由がただの寝坊だったら瞬殺してやるところだ)と言いたいほうだいである。
「ま、カカシ先生だし」とサクラが返す。サスケも頷く。
カカシの遅刻にはもう皆慣れっこなのだ。
それでも3人ともカカシが時間通りに来ることはないと確信しながら集合時刻は厳守している。
律儀というか、カカシを反面教師にしている。
サスケいわく、時間を守るのが忍以前に人として最低限のルールだ、というわけである。


そうこうしているうちにようやく遅刻魔カカシが、ハハハ、おはよう諸君と笑いつつ後頭部を掻きながらやってきた。
「いやーすまんすまん。今日は…
『はい!嘘!』3人の声が見事にハモる。
「お前ら、こんなときだけチームワークバッチリね。
まだ何も言ってないでショ。言い訳ぐらい言わせてよ」
「聞くだけ無駄だ」
「言い訳だってわかってることを聞いたってどうしようもないわ」
「どうせウソだってばよ」
次々に3人が言う。
「ひどいこと言うなあ…。
もう少し先生を敬おうって気はないの、お前ら?」と苦笑しながら言う。
『ない!』とキッパリ、またもや声をそろえて言う。
そんなキッパリ…と少しショックを受けるカカシ。
日頃の行いが悪すぎる。

「そんなことより今日の任務は何だってばよ、カカシ先生」
(くだらない下忍の任務なんかさっさと終わらせて早く寝たいんだよ、俺は)と内心イライラしながら尋ねる。
「そんなこと…(ちょっとショック)。
…今日の任務はマダム・サザエの愛猫タマの捕獲。
くわしくはコレ見て」と依頼書の写しを見せる。

「まったそんな全然忍者っぽくないショボい任務〜!?」
(いくら下忍レベルの任務つってもこんなんばっかはヤバイだろ。成長できねーじゃん)とナルトが少々ごねる。
「さっさとやるわよ、ナルト!」
(早く任務終わらせて今日こそサスケ君とデートvvしゃーんなろー)と内なるサクラを出現させつつナルトを引っ張っていく。
「ふん、今日こそは足手まといになんなよウスラトンカチ」とサスケが嘲笑を送れば、
「なんだとー!!それはこっちのセリフだってばよ!馬鹿サスケっ!」とナルトがつっ走る。
ようやくいつものように任務開始。

カカシは走り去っていった下忍たちを見ながら、仲が良いんだか悪いんだかとつぶやく。
子供たちを見送った後、カカシも移動し、イチャパラの続き読まなくちゃねvと心躍らせながら、ナルトたちの様子が見える木の上に上り読書を始めた。
一応下忍達の行動を見守る気はある…のか?





ナルトは影分身を使っていた。
影分身のほうにいつものようにドベを演じさせ、本体は目標のタマを早々に捕獲。
サスケに捕まえさせようとサスケが探している範囲に再び放す。
もちろんカカシに見つかるようなヘマはしない。
(普通の猫ならたまにはナルトに手柄立てさせてもいいけど、なんかこの猫、元忍描みたいで、ドベ一人で捕獲するのは難しそうなんだよな。
サスケにまかせとこ。
そんなことよりさっきからなんか変な感じするんだよな。
…あースッキリしねえな。
なんなんだよ。見知らぬ人間の気配とかもするわけじゃねえのに)

こう変な感じがするときはいつも何かある。
ナルトの第6感というやつである。
そのおかげでナルトは今まで生きてこられたと言ってもいいくらいで、ナルトはその勘を信用している。

警戒しつつ辺りを窺う。
そのときピカっと目の前が白く覆われる。
(!? なんだ!?なんの気配もしなかったぞ!目くらましか?)
瞬間的にそんなことを考えながら、後ろに飛び下がる。
後ろが安全なのはもちろん確認済みだ。
2〜3mたらずの局地的な閃光の中に突然人の気配が現れる。
殺気や敵意は感じない。

「うわ!痛っ!な、なんだ?」
困惑した男の声が聞こえたとき、光は消え、そのあとには見慣れない長身・黒い長髪の男が座り込んでいた。

(里のやつじゃねえな。他国の忍か?さっきのはなんかの術か?
でもそれなら敵意を感じないのはおかしい。
とりあえず、警戒させねえようにドベナルトで対応するか)
「あ、あんた突然現れてなんだってばよ!?ダレだ!?」
ナルトの声で男の気配が一瞬シャープになるが、ナルトの姿を確認すると気配が緩んだ。
(一瞬だったが、あの気配はまったく一般人ってわけじゃなさそうだな)
「子供か」と小さくつぶやいた後、男はにっこり笑いながらナルトに話かけた。
(うわっ、変わった形のサングラスで顔の上半分は見えねえけど、こいつすげえ美形だ)
ナルトは自分の意識とは無関係に、反射的に頬の体温が微妙に上がるのを感じた。

「すまない、ボウズ。驚かせちまったな。
俺の名前はルシファード・オスカーシュタインだ、お前は?」
(声もなんか必要以上にエロい気が…こいつ色仕様の忍者か?)
「…うずまきナルト」思わずうわずりそうになる自分の声に驚きながら答える。
「ええと、るし…
「ルシファードだ」
「そのルシファードって名前の響き聞きなれないんだけど、どこの人だってば?
木の葉の里の住人じゃねーだろ?
許可証ないと不法侵入になるってばよ!」
「え!木の葉?どこだそれ。聞いたことねえぞ。
それに不法侵入だって?」
(本気で困惑してるみたいだな。どういうことだ?)
「サイコキネシスでどっかに飛んじまったみたいだとは思ってたが、もしかして今の状況ってやばい感じ?
なーんか嫌な予感…」と小さくルシファードがつぶやく。
おそらく普通の人間なら気づかない声の大きさだがナルトにはしっかり聞こえた。
(サイコキネシス?なんだ?また聞きなれない単語だ)
「ナルト君、もしかして、ここはカーマイン市じゃないのか?」
「かーまいん?どこだってば、そこ?」
「…じゃあ、銀河連邦って聞いたことある?」
「ぎ??」
(聞いた覚えのない言葉ばかりだ。この男、本当に何者だ?
頭がおかしいってわけでもなさそうなんだけど)
……。

ルシファードが表情は笑顔のまま顔色が青ざめるのが見てとれた。
「ごめん。ナルト君。ちょっとだけ待ってくれる?頭の中整理するから」
「へ?」
ルシファードが突然頭を抱え、勢いよくブツブツとしゃべりだす。
「落ち着け、ルシファード・オスカーシュタイン。自分の行動をよく思い出すんだ。
そう、今日もいつものように筋肉ダルマどもの熱い視線と野太い歓声を振り切りつつ、無難に訓練と任務を終え宿舎に帰室。
そして着替えもそっちのけで息抜きにPH読んで爆笑。
…ライラ呆れてたな…。
ん、そん時思わず何か叩いっちまったような…。
あ〜!!思い出した!もしかしてPH読んで笑いすぎて死ぬ〜笑い死ぬ〜なんつってモニター素手で叩き割ってそんときに感電したのが原因なのか!?
そのショックでサイコキネシスが発動してテレポーテーション?
でもいつもなら危険がない部屋の外か寄宿舎の外ぐらいで終わるはずだ。
それがなんで銀河連邦の影響が通じないような場所まで転移したんだ!?
宇宙船も使わず星間移動なんて冗談じゃねえぞ。
いくら俺が人間離れしててもそれはないだろう。
第一、ここぐらいの文明レベルで銀河連邦の影響がまったくないはずがないんだ。
どういうことだ?まさかよくあるSFみたいにパラレルワールドに来ちゃったわけ?
だとしたら俺ってばすっごくレアな実体験しちゃってるってことになるのかな?
…戻れねーと意味ないけど。
あー苦労して戻れてもライラに絶対怒られる。
原因があんなくだらねーことじゃな。
…PHはしばらく禁止だな、こりゃ。
問題は帰る方法だが、こういうののセオリーは来たときと同じような体験をすると元に戻れるっつーもんだが、この場合、感電?ぞっとしねえなあ。
しかも同じ条件ならかなりの高電圧になるな。
死にはしないと思うけど痛いのはいやだあ。
俺、マゾじゃないし。
よし、感電は最後の手段。どうせ電気を発生させる媒体も作る必要もあるし、作りながら他の方法も考えよう。
つーことはしばらくここで滞在させてもらわねーと。
ついでにせっかく貴重な体験で初めて来た場所なんだし、少しぐらい楽しんでから帰るという計画でいくか。
ん?でもさっき許可証がないと不法侵入になるって聞いたような…」

(声は聞きとれたが、内容はほとんどわからなかったな。
わかったことはこの男はやっぱりよそ者で、ってオレのこと知らない時点でよそ者に決まってるんだけど。
あと、とりあえず困ってるみたいってことかな。
…なんか途中から立ち直って観光気分な気もするが)

「あ、ナルトくん待たせてごめんな。
…信じられないかもしれないけど、俺、何かのはずみで別の遠い場所からここに飛んで来ちゃったみたいなんだけど、はっきり言うと帰り方がわからないんだ」
「ふーん。よくわかんねーけど迷子ってこと?
大人なのにルシファードさんってドジ?」
「…迷子…。…まあ、そんな感じかな」
「それで、しばらくここで生活しながら帰り方考えたいんだけど、許可証ってどこでもらえるのかな?」

(普通はそう簡単に許可されないんだけど。
ていうか、進入した時点で殺されるかも?
まあ、まったくの一般人でなくとも敵意はないみたいだし、忍でもないみたいだし、何より面白そうだし。オレからじっちゃんに言えば一発だな)
「オレってば今任務中だから、ちょっと待ってて。
後で火影のじっちゃんのところに案内するってばよ!」
「任務?」
「そ、オレってば木の葉の忍者だからね!
じゃ、行ってくるってば!」
木を飛び越えつつ任務をさっさと終えるべく、ナルトが立ち去った。


その場に残されたルシファードは、
「忍者…地球系のかっなり昔の映画で見たことあるような。
やっぱパラレル世界に来てるみたいだな。
あの動きはフィクションじゃないと難しいだろ。」とナルトの動きに呆然としつつつぶやいていた。





その後マダム・サザエの愛猫タマ捕獲の任務は、影分身を解除したナルトがドジをやるふりをしながらタマの動きを誘導し、うまくサスケに捕まえさせた。
ナルトがルシファードの元を去ってからわずか5分後のことだった。




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