侵入者!? 11 〜再会〜 「ただいま〜って、珍しい。ルシファードさんより早い帰宅?」 空は夕暮れに赤く染まっている。 まもなく日も沈みきるだろう。 多くの家庭で夕食の支度が大詰めを迎えているらしく、帰り道では家庭から漏れた空腹感を誘う芳しい匂いが鼻先を掠めた。 ルシファードとナルトが同居を始めてから、この時間帯はナルト宅でも台所には夕食の支度に腕を振るう 任務を終えて帰宅したナルトが玄関の扉を開けると、途端に美味しそうな夕食の匂いが漂ってきて頬を思わず緩ませたり、食材を包丁で刻む軽快なリズムが聞こえたりするのが当たり前になっていた。 しかし、ここ最近では珍しく家の中は静まりかえっていた。 とりあえずのど渇いたし牛乳を飲もう。…ルシファードさん帰りまだみたいだし、今日は久しぶりに料理をしようかな。食材、何あったかな… そう思って冷蔵庫に向かったとき、何かが視界をかすめた。 何も、誰もいないはずの空間に。 そこにいるはずがないのに、そこにいるのが当たり前のように感じる雰囲気。 何故今まで気が付かなかった!? 間が抜けているとしか言いようのない自分の失態に内心で舌打ちし、警戒態勢に入る。 「誰だってば!?…ってルシファードさん?」 疑問形だったのは、自分が知っている人との差異。 目の前にいる人物とルシファードは確かにそっくりだ。 スクリーングラスを同じくしているので瞳の色まではわからないが、コピーしたような顔の造形。 ただ、目の前にいるのは黒髪長髪ではなく、短めの銀髪を軽く後ろに流した髪型の男。 髪型を変えれば見た目ではルシファードがもう一人できあがるだろう。 しかし、ルシファードとは明らかに違う物があった。 その身に纏う雰囲気の違い。 ナルトがその男に気づく直前まで、男はまるでそこには何も存在しないかのような雰囲気をだしていたが、今は違っていた。 ルシファードは基本的に親しみやすい雰囲気を持っているが、目の前にいる男からはずいぶんと冷たい印象を受ける。 思わず緊張せずにはいられないような雰囲気。 「うちのルーシーがずいぶんと世話になったようだ。初めまして、うずまきナルト君」 「あんた誰!?それよりも、あんた勝手にオレん家入って!それってば不法侵入じゃん!」 身に纏う雰囲気の差はあれど、これだけ外見が似通っているということは遺伝子のつながりを否定することは難しい。 この場で見た感じではさほど年齢差はないようだから、ルシファード兄弟か何かなんだろうと検討は付く。 しかし、ナルトを現在まで生かしてきた第六感といってもいい感覚が警鐘を鳴らしている。 ヤバイ。 コイツ、すごく強い。 目の前にいる男がその気になれば、自分は殺される。 男はそう思うだけで、なんなく自分の心臓を握りつぶせるだろう。 そういう確信めいた危機感を感じる。 男をその気にさせてはならない。 とにかく、油断させておくことだ。 もしもの時、せめて逃げられるように。 そのためには、いつものように無力な子供を、ドベのふりをしておいた方が都合がいい。 「ふむ。君は面白い内面をしているな。 不法侵入は悪かった。この建物の奥から電波が発信されていたため、確認させてもらった。 君の疑問だが、私の名はオリビエ・オスカーシュタイン。通称O2だ。一応、アレの父親だ。 それと、馬鹿を装うという作戦も悪くはないが、今のところ、私は君と敵対する気はまったくないので安心していい」 「!あんた、心が読めるのか…!」 ナルトはルシファードの父親だと名乗る男に警戒心を強める。 自己申告通り敵意はないようだが、油断はできない。 研ぎ澄まされた抜き身の刀のように鋭い気配。緊張感。 この状態でどう安心しろと言うのか。 緊迫した空気が流れる。 それを壊したのは、この場にはあまりにも不釣合いなのんきな声。 「ただいまー、って、親父!?なんでここに!?」 ルシファードが帰宅し、父親を見て驚いた。 息子、父親とお互いが認めているのだ。 間違いなく親子なのだろう。 どう見ても兄弟だろうとしか思えない年齢差の外見であっても。 これは息子が老けているのか、父親が極度の若作りなのか。 「突然消えたまま帰ってこない息子を心配して迎えにきてやったんだ。感謝するんだな」 そういう父親の言葉には感情が感じられず、淡々としている。 行方不明だった息子と再会した割には感動がない。 一般的に言う親子という言葉から想像するような親しみやすい雰囲気も皆無である。 言葉の雰囲気だけで判断するなら俗にいう仮面親子といった感じだ。 「息子を心配してって柄かよ。嘘臭い。」 ルシファードが半眼で呆れたように言う。 「情報部は今よっぽど暇なのか? それに迎えに来たって、親父はココにどうやってきたんだ?」 「情報部はいつも通り多忙だ。なに、たまには父親らしいことをしてもいいかと思ってな。こんな時のためにも部下はしっかり育ててある」 右の口角を僅かに上げ、皮肉っぽく笑う。 「父親らしいだって?瞬間親父がよく言うぜ。 それに、『部下はしっかり育ててある』だなんて、どう育てられたのか考えただけで繊細な僕の胃に穴があきそ〜」 父親の口調を真似た後、ふざけた様子で自分の身体を抱きしめ身をくねらす。 その様子を見てナルトは、こんなおっかなそうな人の前でふざけられる時点で、ルシファードは大物だと思った。 間違っても胃潰瘍になる心配はなさそうだ。 さっきまでの緊張感は一体どこに…? 漫才じみた父子の会話にナルトはすっかり気抜けした。 「お前が宿舎から消えた後、アレックス・マオ中佐から知らせをうけた。 部屋から宇宙船が星間移動する際と同様の空間の歪みができていたそうだ。 さらにそこからは、テレパシストが意識を失うぐらいに膨大な量の残留思念が垂れ流しにされていた。 キュウビ、チャクラ、ホカゲなど、意味不明の言葉だ」 九尾……。その単語にナルトは眉をひそめた。 その様子に気づいたのだろう。O2が一瞬ナルトを意味深に見つめた。 「その空間の歪みと、垂れ流しの思念からここの座標を計算、確定し、宇宙船ではるばるやってきたというわけだ。 ついでに、未確認の惑星の存在が明らかになったので、その調査だ。 なかなかスリリングな航海だったぞ。ブラックホールを2つほど抜けてきたからな」 「未確認の惑星ってもしかしなくてもここか?ここって、宇宙船で普通に来れるのか……。まあ、ブラックホールを越える時点で普通じゃねーが。 ……ということは、オレは結局、念動力で星間移動したってことじゃねーか!」 衝撃を受けるルシファード。 そこまでは化け物じゃねえと思ってたのに…! ルシファードは精神的にかなりのダメージを負った。 一方、2人の会話においていかれているナルト。 九尾、チャクラ、火影の言葉には反応したが、理解できない言葉も多い。 会話の内容も確認する必要があるが、まずは目の前にいる不審人物の確認が優先だ。 「ルシファードさん、この人が父親って本当?全然年離れてねーみてーだけど」 ナルトの問いかけに、ショックで固まっていたルシファードの意識が現実を向いた。 「ん?本当だぜ。種族的な関係で若く見えるけど、親父は本当は91歳の爺さんだ」 ルシファードがなんでもないことのようにサラッと言った衝撃の事実。 「91!?嘘!?どう見たってせいぜい30歳代じゃん!」 O2を改めて見たが、どう見ても若い。 91歳だというのが本当だとしても、いったいいつの子供だって……引き算で簡単。60過ぎてます。 ……孫の木の葉丸が生まれた時の火影のじっちゃんより年上で父親。 「そういう種族だからな。この惑星の外には千年を越えて生きるような妖怪みてーな種族もいる」 「マジで!?」 どうやら世界は思っていたよりずっと広大で、自分が知らないこともたくさんあるらしい。 ナルトはカルチャーショックを受けた。 |