侵入者!? 8 〜襲撃〜 今日も仕事を無事に終え、夕食の買い物をした帰り道。 最近ルシファードは里の繁華街は避け、わざと遠回りをして森を通って帰宅するようにしていた。 里の繁華街を通ろうとすれば、里の人々に囲まれるせいだ。 悪意はない(多分)はずだが、毎回こうだとたまらない。 そこでルシファードは人目を避けて、森を帰宅ルートに充てているのだった。 また、たまに森で探し物とかのDランク任務を行っているナルトたちを見かけることもあって、そういう楽しみもある。 やっぱり、子供っていいよなあ。 『小さいころからパソコンに親しんでバッチリ使えるようになろう作戦☆By.三代目火影』計画実行のため、アカデミーでパソコン教室の講師をルシファードは最近新たに頼まれた。 今日は授業のあった日で、歩きながらそのことを思い出していたのだった。 初めは忍者でもなんでもない、しかも顔をスクリーングラスで隠し、膝まで届く長髪、190cmを超える長身で威圧感があるという怪しい人間に戸惑う様子が見られたり、言うことを聞かない生徒もいたが、授業が終わるころにはルシファードの笑顔と美声、面白く興味深い授業内容で生徒の人気を勝ち得た。 そんなほんわかとしたルシファードの幸せな時間が突如壊された。 「!」 後方からルシファードの足元に突然飛んできたクナイ。 手に提げていた買い物袋に命中し、袋の中身が散乱した。 飛んできた方向を咄嗟に見ると、新たに数本のクナイが飛んでくるの確認でき、横飛びに避けた。 その瞬間ルシファードがいた地面にクナイが突き刺さる。 避けた先にも今度は手裏剣が飛んできたので、今度は反対側に避け、その時に先ほど投げられたクナイを2本取り、手裏剣が飛んできた方向にナイフ投げの要領で投げた。 ザッと音がし、一人の忍者が木から飛び降りてきた。 黒い短髪で、中肉中背の若い男だ。 反撃してくるとは思わず油断したのか、それがその忍者の実力なのかは不明だが、その左腕にはルシファードが投げたクナイがかすったと思われる傷があった。 「くそ!民間人のくせに抵抗すんじゃねえよ!」 怒り心頭といった感の忍者が刃渡り50cmほどの片刃の刀でルシファードに切りかかる。 勝手に突然攻撃してきたのはそっちだろう!? 少なくとも、こちらに来てからは命を狙われるようなことはしていない。 元の世界にいてこうなるなら、まだ納得できるんだけどなあ、と理不尽さを感じつつ、完全に逆ギレ状態の忍者に対抗すべく、自分の体の周りに重力を利用したバリアを張る。 周りの森を傷つけるのは本位ではないため、ギリギリまで敵を引き寄せ、そのバリアの範囲を広げて反撃しようとした瞬間、横からクナイが飛んできて、対峙する2人の間の地面に刺さる。 敵は2人か…? そう思った瞬間、もう一人の忍者が現れ、逆ギレ忍者を草履でスパーンと殴った。 「この、ドアホウ!任務内容を忘れたんか!?殺してどーする!冷静にならんかい!」 「う、すまねえ」 殴られた頭を抑え、涙目で謝罪する元逆ギレ忍者。 今現れた忍者の方が権力も、実力的にも大分上のようだ。 「お前が一人でいけるってえっらそうなこと言うから、まかしたったのに! この大ボケ! もう、お前は大人しくしとれ!」 逆ギレ忍者を殴った草履を履き直しつつ、怒鳴りつける忍者その2。 忍者その2は色素の薄い茶髪で、ヒョロっとした体格をしていた。 目はつり上がり気味の細い目で、ずっと笑っているかのようにも見える。 そして拳が入りそうな大きな口。 戦闘中のはずが、目の前で突然始まった漫才じみた様子を見てルシファードはあきれた。 しかし、飄々としたその忍者に、油断のならないものを感じていた。 「すまんなあ、兄ちゃん、連れが手荒くて。 兄ちゃん、ルシファードっていう、名前やろう? 悪いけど、明日からは木の葉じゃなくて、うちの里で働いてもらうわ」 忍者その2がニコニコと笑みを浮かべながら言った。 一見笑顔だが、実は全く笑っていない。 氷のような冷たさを感じる。 「は、突然何を言い出すんだか。 はい、そうですかって、承諾するはずがないだろう」 突然攻撃されて、好意を持つはずがない。 「承諾なんていらんよ。 無理やり連れて行くさかい。 まあ、ちょーっと痛い思いしてもらうかもしれんけど。 抵抗しんように、あと逃げられんように、足、切るとか。 里に着いたら着いたで、薬で頭いじくってこっちの言うこと聞くようにすればいいだけの話やし。 欲しいのは木の葉に革命的なコンピューター技術をもたらしたあんたの頭やからな」 変わらず笑みを浮かべながら男が言った。 しかし、話した内容は決して笑えない内容である。 「ふざけるな!」 「いたって本気や」 そう言った男の姿が消える。 「…くっ」 ルシファードは反射的に後ろに避けた。 男の刀が左の下腿部を切り裂き、傷口から血が噴き出す。 「残念。今ので足もらうつもりやったのに。 切れたの1/3ぐらいやん。 兄ちゃん、ホントに忍者とちゃうの?」 残念と言う割にはちっとも残念そうではない様子で言う。 遊び甲斐のあるおもちゃを見つけたような様子だ。 「俺は軍人だが忍者じゃねーよ!」 吐き捨てるように言う。 「グンジン?まあ、なんでもいいけど。 ……あれ?おかしいなあ。 なんか、足の傷治ってない? 脅威の回復力? おもろいなあ。 オツム意外にも利用価値ありそうやなあ…」 嫌らしい笑みを浮かべ、ぺろりと唇を舐めた。 こいつらに連れて行かれたら、もうまともな人生は送れないこと間違いなし。 本来の目的らしいPCやらIT関係で利用価値がなくなるか、多用した薬でバカになって使えなくなれば、次は解剖と人体実験生活。 マッドなやつらには俺の化け物じみた治癒力は実に面白い研究対象だろうからな。 ついでに超能力なんてオマケつき。 まあ、こっちの世界には超能力はないみたいだから、どの程度そいつらに俺の力が理解できるのかわかんねえけど。 自分の体を研究に差し出す気は皆無なので、知ったことではない。 とりあえず、結果的になぶり殺しにあうのは間違いない。 そんな不愉快な予測が容易に立てられる。 「解剖やら人体実験に付き合う気はもう2度とねえんだよ!!」 あまりの不愉快さに、とてつもない大きさの殺気を発するルシファード。 「うわああああ!!!!!!」 あまりの殺気に先ほど涙目になっていた忍者が発狂し、あたりかまわずクナイや手裏剣を投げる。 ルシファードは再び重力のバリアを張り、防御した。 飛んできた武器は重力に従ってルシファードに当たる前に地面に叩き落とされた。 「チッ。役立たずが!」 忍者その2が器用に武器を避けながら発狂した忍者に迫る。 そして、味方のはずの男の首を容赦なく刀で刎ねた。 顔に飛んだ返り血を手で拭い、刀に付いた血をおいしそうに舐める。 そんな忍者に向かってルシファードは自分の周りに落ちている武器を念動力で持ち上げ、投げた。 手で投げるよりずっと早いスピードで標的に向かって飛ぶ。 忍者はこの攻撃に一瞬だけ驚いたように細い目を見開いたが、体を傾けて避けた。 すべての攻撃を避けながらも、男は確実にルシファードに迫る。 ルシファードは次に手前から地面を波立たせ、表面を剣の様に尖らせた。 男は後ろ飛びにこの攻撃を避ける。 「この嘘つき!お前やっぱり忍者やろう!? コレは土遁やないんかい!? てか、印を結ばんなんてどういうことや!?」 男がルシファードの攻撃を避けながら悪態をつく。 ルシファードは間違いなく忍者ではない。 さっきからの攻撃も忍術ではなく、彼の念動力によるものだ。 しかし、わざわざ教えてやる義務も義理もない。 「くそ!何が民間人や!任務外じゃっつーねん!」 忍者がすばやく印を組み、地面に手をつく。 そして、ルシファードの攻撃を相殺した。 「コレぐらい俺にだってできんねん……うわ!」 見えない何かで忍者が前方に飛ばされ、地面に叩き倒された。 ルシファードが念動力で空気を圧縮させ、忍者にぶつけたのだ。 忍者が倒れた先には先ほど作った剣のように尖った石と土。 やったかと思った瞬間、ルシファードは足首に苦痛を感じ、それと同時に地面に押し倒された。 地面に倒れこむ直前に見たのは、串刺しになっている、首のない死体。 ……変わり身……!? 「足首の腱を切断した。観念しーや」 忍者が勝ち誇ったような表情で、ルシファードの首にクナイをあてる。 「安心してナ、殺しはせんさか……」 そこまで言ったところで男の言葉が止まった。 ルシファードが念動力を行き渡らせた髪の毛を男の腕と首に巻きつけ切断しようとした瞬間、その行動を取るよりも先に、男が突然ルシファードの右側に倒れこんだ。 見ると、細い光沢を帯びた糸が男のこめかみを貫いていた。 糸を視線で手繰り、その先にいたのは…… 「ルシファードさん!大丈夫!?」 「ナルト君!?」 |