侵入者!? 9 〜襲撃 その後〜 厳しい目をしていて、いつものように笑顔で明るい雰囲気ではないが、糸の先にいたのは間違いなくナルトだった。 「ありがとう、ナルトくん。助けてくれて」 ルシファードは上体を起こし、男に巻きつけた髪の毛をはずした。 「……もしかしたら、助けなくても大丈夫だった?」 何かするつもりだったんでしょ?と髪に目線を合わせて言った。 「いや、もしかしたら失敗したかもしれないし。 助かったよ」 もし、髪を使っての攻撃が失敗しても、周りの被害を気にしなければ使える方法もあったのだが、あえてそれは言わない。 ルシファードはナルトに向かって微笑んだ。 だから、その笑顔は反則だって…と軽く頬を染めながらナルトは思った。 「!ルシファードさん、怪我は?」 全然平気そうな顔をして話をしてるからあまり気にしなかったが、ルシファードのパンツは切り裂かれ、かなりの血で濡れていた。 かすったどころじゃないはずだ。 「ん?もう、大丈夫。治った」 「治ったって、これだけの出血だ。かなりの傷だろう!?」 問答無用で足を見る。 しかし、皮膚の血を拭えば現れたのは傷なんかない、きれいな皮膚。 不思議そうにルシファードを見れば、 「だから、大丈夫だって。 俺の治癒力って半端じゃなくてさ。 どんな傷でもすぐに回復すんの。 ただ、あんまりひどいダメージだと回復した瞬間、餓死するかもだけど」 わざと冗談っぽく言う。 それを聞いた瞬間ナルトの表情が強張った。 その様子を見て、ルシファードは あーあ、また化け物とか思われちゃったかなあ。 と考え、また、そう考えたこと自体に傷ついていた。 『気をつけろ、お前は化け物だからな』 ついでに父親の言葉も思い出し、二重に落ち込んだ。 「……オレと同じだ」 ポツリと言ったナルトの言葉に、今度はルシファードが不思議そうな顔をする。 「オレもさ、腹に化け物飼ってるせいで、脅威の回復力ってやつがあるんだ」 ルシファードは“腹に化け物を飼う”という言葉に疑問を感じたが、ナルトがそう言った時の痛々しい表情に深く追求するのはやめる。 自分はいずれこの里からいなくなる。 たぶん、そんな人間が軽く聞いていい問題じゃない。 「そうか……」 頷くだけにした。 「……追求しないんだね」 「……まあね。あまり話したいことじゃないんだろう? それに、何を聞いてもナルト君はナルト君だし。 無理して話す必要はないさ」 「うん。ありがとう」 オレは、オレか……。 ルシファードの優しさがナルトは嬉しかった。 「それでさ、コレ、どうする?」 ルシファードが指差したのは地面に転がっている2人の忍びの死体。 「ああ、そうだった。 そもそも、なんでルシファードさんが他国の忍と殺りあってたの?」 「そう。オレもいきなり攻撃された時は、こっちでは恨まれる覚えないしさ、不思議だったんだけど、今、PC関係の仕事してるだろう? 自分の里に連れて行って、働かせるつもりだったみたいだぜ。 まあ、薬で頭いじくるとか、足切ってでも連れてくとか言ってたから、まともな労働環境じゃねーみたいだけど」 嫌悪感をあらわにしてルシファードが言った。 「ルシファードさんがその関係の仕事をしていることは一般には知られていないはずだ。 里の機密に関わることだから。 誰かが洩らしたと考えるのが妥当だな」 「じゃ、とりあえず」 「火影のじっちゃんに」 「報告にいくか」 「関係ないけど、ナルト君て、真面目な話する時って『だってばよ』っていう口癖出ないんだね。 雰囲気も違うし」 「……。 本当はこっちが素で、いつものはわざとバカやってるんだ。 …その方が色々と都合いいしさ」 少し考えて、ナルトは告白した。 九尾事件を知らないルシファードには、素であろうが、ドベであろうがどちらでも関係ない。 「そんなもん?」 「そんなもん」 火影屋敷。 早速、三代目火影に今回の事件について報告したが、報告するうちに火影の顔を汗がつたい、顔色も悪くなった。 「〜他国に里の機密が洩れているようだ。 洩らしている奴を始末しないと……って、じっちゃん?」 火影の様子に不審そうにナルトが尋ねる。 次の瞬間、机に両手をつき、三代目火影が頭を下げた。 「たぶん、わしのせいじゃ…!」 「「なんだって!?」」 「じっちゃん、どういうこと? 今すぐということはなくても、ルシファードさんは命の危機だったんだぜ?」 事と次第によっては…… ナルトとルシファードが鈍く殺気を放つ。 「実はな、この間の家電・通信学会に出席した時に、 最近非常に優秀な人材を登用して、それから木の葉は画期的に技術力の向上が見られたと言う話を……」 「じっちゃん……」 「火影様……」 2人の呆れた口調と冷たい視線が火影の老体に沁みた。 「うう、すまぬ……嬉しくて、つい……」 今回の事件で、三代目火影は大きな貸しを作ることになった。 とりあえずルシファードは、 再び襲撃を受けた際、民間人の命に関わらない限りはどんな抵抗をしても良い。 またその際にどんな物的被害が出ても、一切の責任は火影が取るという契約をして帰宅した。 また、突然の襲撃は遠方からの殺気を察知できないルシファードには致命的になる恐れがあるので、ナルトの影分身がこっそり護衛に付くことにした。 これは、ナルトの独断によるもの。 「ルシファードさん、今日は一楽でラーメン食べて帰ろうってば!」 「そうするか」 どっちみち、夕食の材料は先ほどの襲撃でダメになってしまったし、今から作ってもかなり遅くなる。 そういうことで、ルシファードはナルトの提案に2つ返事で了承したのだった。 |