中忍試験、試験中止、木の葉崩し、火影の交代……
色々あって……
色々あったけど、それらも少しずつ時間が解決していった。
ヒナタもオレも14歳。
今は2人とも中忍。
オレが中忍なのは表向きで、相変わらず暗部としても働いていたけど。
* * 彼女のイメージ
ヒナタとはいい友人をやっている。
たまに休みが重なったりした時は、一緒に買い物をしたり、食事をしたりする。
下忍の同期の仲間が一緒な時もあれば、2人だけのときもあった。
――ある日の夕方
今日は思ったより早く任務が終わったな。
…ヒナタの様子、見に行ってみようかな……
そう思い、ナルトは木の葉病院に向かった。
ヒナタは現在そこで医療忍術を学んでいるのだ。
中忍試験時に瀕死の重傷を負った経験、そして現在の里長であり、医療忍術の屈指の使い手である綱手の影響から、ヒナタは医療忍術の体得に非常に力を入れていた。
木の葉病院の出入り口。
ナルトなら数秒とかからない程度の距離まで来た時、タイミングよくヒナタの姿が見えた。
ナルトはヒナタに声をかけようとして、やめた。
瞬間、半ば逃げるようにしてその場から立ち去った。
……なんでオレはあそこから逃げたんだ…?
あの時出入り口から出てこようとしたのはヒナタと、そしてヒナタと親しそうに会話する若い男。
男は笑ってヒナタの肩を叩き、ヒナタも男に笑いかけていた。
「おい、ナルト、何しけた面してんだ?」
木の葉の裏通りを、考え事をしながら歩いていたナルトに話しかけたのはシカマル。
「よお、シカマル。まあ、ちょっとな……」
いつものナルトと違って覇気のない反応にシカマルは僅かに眉を寄せた。
「…ちょっと来いよ。話しようぜ。茶でも飲みながらよ。お前がそんな顔で考え込んでいる時は、ろくな結論出さねえからな」
茶屋の隅の席を陣取り、団子を食べ、合間にお茶をすすりながらポツリポツリとナルトが話をすれば、聞き役のシカマルは何が疑問なんだ?と言わんばかりに首を傾げた。
「なんだよ、シカマル。その表情は?」
シカマルの反応に少しムッとして様子のナルト。
「なんで逃げたか?そんなの考えるまでもねえ。ヒナタとその男が仲良くしてるのを見るのが嫌だったからだろう?」
さも当然のことのように言うシカマルにキョトンとしたのはナルト。
「なんで嫌なんだ?…確かに今考えてみると嫌だな」
「……」
本当に分かっていない様子のナルトに驚きを隠せないシカマル。
お茶を飲もうとした姿勢のままで固まっている。
「…てめえの女が他の男と親しくしてれば嫉妬の一つや二つするだろう?」
「へ?誰が誰の何だって?嫉妬?」
瞬間湯沸し器のように真っ赤になるナルト。
演技でドベを演じている時ならいざ知らず、素では初めて見る表情にシカマルは心底驚く。
(オイオイ、マジかよ……)
そして、自分はナルトとヒナタの関係を勘違いしていたのかも知れないと、今さらながらに考えた。
「今からいくつか質問する。めんどーかもしれねーけど簡潔に答えろ」
藪から棒に何だとナルトが言うが、それは無視して質問する。
「ヒナタのことどう思ってる?好きか?」
「え!?/////いきなりなんだよ、その質問は。…そ、そりゃあ好きだけどさ。仲間だし、友達だし」
ナルトの答えに、
(やっぱりそうか…。すっかり2人は付き合ってるもんだとばかり思ってたぜ。しかも自分の気持ちに自覚なしときたもんだ)
と内心溜息をついた。
(にしても、こんなわかりやすい反応するくせに自覚がねえってのはどういうことだ?鈍いにも程があるだろうに。メンドクセー奴だ)
シカマルは呆れながら次の質問に移った。
「じゃあ、オレのことは?」
「…普通、真正面から聞くか?そんなこと」
呆れた様子のナルトに、シカマルはにぶちんのお前のためにやってるんだよと心の中で舌打ちする。
「いいから、答えろって」
「はいはい。好きだぜ、親友」
少し照れくさそうなナルトにシカマルは口角を上げて、にっと笑い、「そりゃどうも。オレも好きだぜ、親友」と答えた。
「で、お前オレがいのやチョウジとつるんでると嫌か?」
「全然」
「じゃあ、例えばの話、知らねえ女と親しくしてるのは?」
「確実に冷やかしてからかうな」
「……お前なあ……」
嫌そうにシカマルが顔をしかめれば、ナルトはしれっと答える。
「だって、シカマルからかうの楽しいし。真っ赤になってカワイイし。何?そういう女いるの?」
「カワイイってなあ…。例えばっつたろ。いねーよ。
はあ。まあいい。次の質問。ナルト、サクラのこと好きだよな?」
「もちろん。大切な仲間だからな」
「じゃあ、サクラがサスケとデートしてるのを見るのは嫌か?」
「いや、よかったなあって思うな。サクラちゃん、サスケ一筋だったし」
ナルトの目元が柔らかくなる。
心底よかったと思っているとわかる優しい表情。
「お前、昔、サクラのこと好きだったんだろ?それでもか?」
「まあ、初めにサクラちゃんを好きって言ってたのは演技の一つだったんだけど…」
演技で好きと言っているうちに、演技以上の感情を持ったことがほんの一時でもあったのは確か。
それが恋心だったのかどうかは今となっては分からないが。
「…今は姉ちゃんって感じだなあ。不肖の弟としては姉の幸せは嬉しいことだね」
ナルトの答えに、シカマルは「ふむ」と満足そうに頷いた。
どうやら藪から棒な質問はこれで終わりのようだ。
「ナルト、お前さ、ヒナタとオレとサクラ、3人とも好きって言ったけど違いがあるのに気づいてるか?」
「へ?」
「お前、ヒナタの時だけ他の奴と仲良くしてるの嫌だと思ってるんだぜ?」
「!」
シカマルの言葉に目を見開くナルト。
「嫉妬だ、そりゃ。友達のサクラとオレ相手には嫉妬してなくて、ヒナタの場合には嫉妬してる。つまり、ナルトはヒナタに友達以上の感情を持ってるってことだろ」
「と、友達以上…それって//////」
そういうことにとことん鈍いらしいナルトも、ようやく自分の感情に気が付いたらしい。
そんなナルトにシカマルはとどめとばかりに追い討ちをかける。
「しかも、ヒナタの時にだけ明らかに身体的異常があった。顔面の紅潮、体温の上昇、脈拍数の増加。気持ちでは気づいていなくても先に身体で反応してるぜ?」
客観的な証拠。
確かにそうだと認めざるを得ない事実だった。
「え、あ…そっかあ…」
少し照れながら自分の頭をガシガシと掻くナルト。
今までしっくりこなかった自分の感情、行動の所以がすっきりと落ち着いた。
「腑に落ちたって顔してるな」
肩の荷が下りたといった様子のシカマル。
「まあ、な。…にしても、シカマルが恋愛相談に乗るなんてなあ」
本当に意外だ…とナルトはマジマジとシカマルの顔を見る。
「自分でもらしくねえことしたって思ってるよ。」
そう言ってシカマルは苦笑する。
そして、ボソッとようやく聞こえるかどうかの小さな声でつぶやいた。
「…お前相手じゃなきゃやらねーよ」
シカマルのつぶやきが聞こえたナルトは、シカマルって本当いい奴だなと心底思った。
「へへ。サンキュー。ここはオレの奢りな。…じゃ、オレ行くわ」
シカマルに礼を言い、伝票を持って席を立つナルト。
「おお。さっさとまとまって来い」
「了解」
シカマルに言われてようやく気づいた自分の気持ち。
オレは、ヒナタが好きだということ。
ヒナタはオレの特別。
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続きを書くといいつつ、すっかり放置されていたナルヒナ連載。(爆)
web拍手のコメントで続きの希望をされなかったら、きっと更新してませんでした(何!?)。
でも今回ナルヒナと言いつつ出てくるのはナルトとシカマルばかり。
ナルヒナというよりはシカナルじゃないのか…?(笑)
という仕上がりになっております。
ナルヒナ好きのラブラブ希望の方には物足りないかも…ですね。
でも、最近シカマルが好きでシカナルにハマってる私は書いてて楽しかったです。(笑)
2004/7/23