NARUTO
〜ETERNAL NIGHT〜


第8話


その言葉をきっかけにお互いに相手を睨み合うと同時に、双方から感じられるチャクラが増し、互いの間の地面が抉れ、徐々に周りの景色が二人のチャクラによって歪みだした。
それが永遠に続くかと思われたその時、屍鬼がすさまじい速さでにゃん魔王の方へ駆け出した。
それとほぼ同時に、にゃん魔王の方も屍鬼の方へ駆け出していた。
二人の距離がお互いの顔が触れるような距離に近づいた瞬間、双方の手から強力な一撃が繰り出され、お互いの顔に食らわせた。
その攻撃でお互いに逆方向に吹き飛んだ。
しかしお互いに体制を立て直した瞬間、その姿が消えた。
その数瞬後から辺りには何かが激しくぶつかり合うような音が響き、その音がするたびに、その場所にはクレーターが出来た。
その現象は屍鬼とにゃん魔王が眼では追えない速度で戦うことで生じたものであった。
すさまじい速度で一進一退の攻防を見せていた二人だったが、にゃん魔王の大振りになった一撃をかわした屍鬼は、一瞬の隙をついてにゃん魔王の後ろに回りこみ、大量の印を一瞬で組み、術を発動させた。

「火遁!! 鳳凰火炎獄の術!!」

その瞬間屍鬼の身体が金色の炎に包まれ、屍鬼の背中の炎が羽の形を作った瞬間、すさまじい速さでにゃん魔王に幾度となく突撃し、上下左右すべての方向から攻撃を加え、にゃん魔王の周りごと炎で飲み込んだ。
相手を燃やし尽くす屍鬼の姿は巨大な火の鳥の姿をしており、その姿はまさに鳳凰の名に相応しい物であった。
しかしにゃん魔王が全身を炎に焼かれながらも僅かに動いたのを見た屍鬼は、全身の炎を更に強力にし、今までの約二倍にまでその姿を大きくし、にゃん魔王にとどめの一撃を加えようと遥か上空から急降下して突撃してきた。

「これで終わりだ!!跡形もなく消え失せろ!!」

屍鬼の攻撃があたったと同時ににゃん魔王の周囲十メートル程にあったすべての物が吹き飛び、その中心には底の見えない大きなクレーターが生まれた。

「はあ、はあ、はあ、ど、どうだ。」

屍鬼が術を解いて、にゃん魔王のいた場所を見ると徐々ににゃん魔王が姿を現した。
しかしその姿はもはや満身創痍で、もはや立っているのがやっとといった姿であった。

「・・・九尾の力を受け継いでいるとはいえにゃ〜、
 まさか人間相手に再生限界まで追い詰められるにゃんて思わなかったにゃ〜」
「ちぃ・・・まさか・・・生きていたとは・・・な・・・」

しかし屍鬼も先ほどの術で身体中が悲鳴をあげておりこちらも満身創痍であった。
それに気づいたにゃん魔王は屍鬼に向かってしゃべりだした。

「お互いにもう限界にゃね・・・次で勝負を決めるって言うのはどうにゃ??」
「・・・いいだろう・・・」

にゃん魔王の提案に自分でも限界を感じていた屍鬼は、その提案を受け、勝負を賭けることにした。
互いに距離をとり、最後の一撃を繰り出すためお互いに神経を研ぎ澄まし、己を高めた二人は数分後、同時に動いた。
最初に攻撃を仕掛けたのはにゃん魔王で、その攻撃は右手の爪に、残された最後のチャクラをすべて注ぎ込み、右手を限界まで上にあげそこから振り落とすという物だった。

「にゃん魔王最終奥義にゃ〜!!
 くらうにゃ〜。猫魔爪!!」

にゃん魔王の一撃は屍鬼が予想していた物よりも断然早く避ける事は不可能であった。

しかしその瞬間、屍鬼の身体に異変がおきた。


    ・・・ドクンッ・・・

    ・・・・ドクンッ・・・・

    ・・・・・ドクンッ・・・・・


(な、何だこの感覚は!?)

その瞬間、自分以外のすべての物の動きが、一瞬だが遅くなった。
それを利用し、襲い掛かってくる爪を身体を右にずらした屍鬼は、紙一重で避けることに成功する。
しかしにゃん魔王の一撃でおきた衝撃波で左半身に多大なダメージを負った。
しかしそれだけですんだのはまさに幸運としか言いようがなかった。
屍鬼が避けたにゃん魔王の一撃によって屍鬼の後ろにはにゃん魔王の四本の爪跡が、数百メートルに亘り底の見えない崖となってつけられていたからである。
最後の一撃をかわされ、無防備となったにゃん魔王に屍鬼は両手にチャクラを収束、乱回転させて螺旋丸を作り、それを合わせて一つにさせた一撃を食らわせようとしていた。

「これが俺の最強の一撃だ・・・螺旋丸改良型・・・螺旋双龍掌!!」

屍鬼の一撃が無防備になっているにゃん魔王の腹部に当たり、にゃん魔王を粉々に砕きながら吹き飛ばした。

「ぐっ・・・にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

その瞬間上空の暗雲は晴れ、にゃん魔王の気配は完全に消え去った。
しかし屍鬼の両腕は肘から下は血まみれになっており、両手の爪はすべて吹き飛び、一部の指は肉どころか骨が見えていた。
屍鬼の最後に出した技はまだ不完全であり威力はすさまじいが術者に掛かる負担も大きく今回の怪我はまだ軽い部類に入っていた。

(ちぃ・・・鳳凰火炎獄に螺旋双龍掌まで使ったからな・・・
 身体が言うことを聞かん・・・が、まだやることが残っている
 ・・・あの女を結界から出さないと・・・)

屍鬼がボロボロの身体で結界を解こうと印を組んでいる間、屍鬼の身体の状態を近くで見たハルカは顔を涙でボロボロにしてずっと謝りながら泣いていた。

「ごめ・・・んなさい・・・・
 ごめっ・・・
 私の・・・私のせいで・・・
 ごめ・・・・・なさい・・・」

結界を解き、ハルカを見かねた屍鬼は優しくハルカに話しかけた。

「大丈夫だ。このくらいすぐに治る。
 だから泣き止んでくれ。」

屍鬼の言葉にほっとしたハルカは屍鬼に抱きつき、多少時間がかかったが泣き止んだ。
しかし泣きつかれたのか屍鬼の服をしっかりと掴んで寝てしまった。
その後屍鬼は元の姿に戻り、寝ているハルカを抱きかかえてハルカの家へゆっくりと帰っていった。
ハルカの家にちょうど着いたときにハルカは眼を覚ました。

「・・・やっと眼が覚めたか・・・・」
「・・・へ??・・・きゃあ!?・・・」

最初は寝ぼけていて自分の置かれている状況に気づかなかったが、自分が屍鬼に抱かれていることに気づいたハルカは顔を真っ赤に染めて下を向いてしまった。

「・・・お、降ろしてください・・・」

下を向いて照れながら小さい声でボソッと言った言葉を聞き、ゆっくりとハルカを降ろした。
その後ハルカの父親が家から出できて、ハルカの無事を確認した後、屍鬼に涙を大量に流しながらお礼を言った。

「ありがとう。ありがとう。
 娘を無事に帰してくれて本当にありがとう。」
「あ、ああ。」

むさい親父に顔を限界まで近くに寄せられ、かなり引いている屍鬼が返事をするとハルカの父親はハルカに言った。

「ハルカ、お前も早くお礼を言いなさい。」

父親に急かされハルカは瞳に涙を浮かべながら微笑し屍鬼に言った。

「本当にありがとうございました。
 この御恩は決して忘れません。」

その言葉を言った瞬間、ハルカは屍鬼の唇に自分の唇を重ねた。

その瞬間屍鬼とハルカの父親は石化し、ハルカはその間に驚愕のあまり半開きになっていた屍鬼の口内に舌を入れ、屍鬼の舌と幾度も絡み合わせた。
時間にして一分以上も唇を重ね合わせていた二人は共に顔を赤らめた。
特に屍鬼は頭から魂が半分出ており、危ない状況にまで陥っていた。
そんな屍鬼にハルカは上目ずかいに顔を真っ赤に染めた状態で屍鬼に言った。

「将来、あなたの花嫁になりたいと思います。
 どうか私を貰って下さい。」
「おお、それはいい。あなたほどお強い人なら娘を安心して任せられる。」

二人の会話に魂を体内にずり戻した屍鬼はあわてて言った。

「すまない。
 申し出は大変うれしいが、今の俺にはそんなことを考える余裕がない。
 それに、俺ではあんたを幸せになどできない。
 悪いが俺のことは忘れてもらう。」

屍鬼がそう言って印を結び術を発動させると、二人は焦点が合わなくなり、気づいたときには誰もおらず、記憶に残っているのは忍者に何かの依頼を頼んで、たった今それが終了したという記憶だけであった。




戻る     次へ


2004/2/17