ナルトから連絡が途絶えた。 そう、突然綱手から重苦しい表情で言われた。 「何を・・・・・」 何を言っているの? だって彼は帰ってくるって、直ぐ帰ってくるって言った―――――――――― 「ヒナタ!?」 目の前が暗くなっていく。 綱手の慌てたような声が遠くなる。 「シズネ・・・・・!直ぐ病院に・・・・・!」 暗転 そのまま、ヒナタの意識は途絶えた・・・・ ****悲しみへの序章**** 「ヒナタ様・・・・・・・」 任務を終えたばかりで直ぐに病院にネジが駆けつけたときにはすでにヒナタは意識を取り戻していた。 「ネジ兄さん。ありがとう、もう大丈夫よ」 医療忍者が病院の世話になるなんて情けない話よねと、無理に作ろうとしている笑顔が痛々しい。 「ヒナタ様、諦めるにはまだ早いですよ。死んだと決まったわけではないのですから・・・」 何を言っているのだろう自分は。 上忍の世界において、連絡が途絶える事=死だ。 しかも3日以上も。 分かり過ぎるほど、分かっている筈なのに。 「・・・・!そう、よね・・・」 ヒナタも分かっているのであろうが、少しだけ明るい表情を見せる。 今は・・・・何かに縋っていなければ彼女の精神が壊れてしまう。 ネジが一礼をして出て行くと、ヒナタは自分の体を抱きしめ、堪えきれなくなったように涙を零した。 「帰ってくるって・・・・帰ってくるっていったのにぃ・・・・」 ************* ヒナタの押し殺した泣き声が耳に入り、ネジはギリッと唇をかみ締めた。 拳を握り締めて壁に押し当てる。 腹が立った。 ヒナタを泣かせている 何も出来ない自分に。 生きているのなら。 「早く・・・・帰って来い・・・・!」 搾り出すように言った。 *********** ドンッ! 木に固定された最後の的が打ち落とされる。 「あいかわらず凄いですね、リーさん。こんな短期間でこれほど上達した方を見たのは久しぶりです。」 「いやあ、静止した的しか当たらないようじゃまだまだですよ」 人気の無い演習場そこには二つの人影があった。 眉毛の太いえらく濃い青年と、きりりとした表情が印象的な茶髪の女性。 一見かなり異色な組み合わせに見えるが、その実この二人かなり親しい。 きっかけはリーが銃の試し撃ちに挑戦したことだった。 『あちゃー外してしまいましたね・・・・?鈴鹿さん?どうしたんですか』 普段冷静な性格がウリのこの女性が、珍しく目を丸くしていた。 『すごい・・・ですね』 『へ?何を言ってるんです?当たったんならまだしも全部外したんですよ?』 『そうじゃないんです』 彼女は首を振る。 『だってこの施条銃って重さ4〜5キロ、十匁筒(←実際にあるぞ)となると7キロにもなるんですよ?しかもこのタイプの銃床には肩当てが付いていませんから、左腕一本で支えなければいけません。普通だったら撃つどころか持つのもやっとな筈です。銃触られたのは初めてなんですよね?』 『はい』 『だったらなおのこと凄いです。うちの里でも初めて撃った連中は皆腰を抜かしていましたから。よっぽど厳しく足腰鍛えてらしたんですね』 心なしか彼女の自分を見る眼に尊敬の色が混じっているような・・・ 『いや、そんな・・・・///』 女性からこんな風に面と向かって褒められたことが一度もないので、思わず照れて顔を赤らめてしまう。 『よろしかったら教えますので、狙撃の練習をしてみませんか?リーさんは体術が攻撃の中心だそうですね?だったら遠距離の敵に対する攻撃補助となりますからやってみませんか?』 勿論、二つ返事で頷いたことは言うまでも無い。 そして現在に至る。 思ったよりリーはこっち方面の才能もあったようで、驚くべきスピードで上達した。 かつては忍の才能が無いと言われ、唯一自分が使えた体術すらも大怪我によって奪われた。 しかし神は『根性で手術を成功させ、リハビリに励んだ』彼を見捨てていなかったようだ。 今となってはリーは有名な体術のエキスパート、そして攻撃手段を増やすべく狙撃の稽古に励んでいる。 「そういえば鈴鹿さんは動きのある敵に対してはどう練習していたんですか?」 「ああ、暗闇で飛び交うホタルを撃つ訓練なんかをやってたんですが・・・・」 ↑(実話だ) 「暗闇でホタルを撃つ!!それはスゴイ!!」 「友達に嫌われました。ホタルがかわいそーだって」 思わずコケそうになってしまうが気を取り直してヨロヨロとリーは立ち上がる。 「お、女の子は虫にも優しいですからね〜」 「そぉですか?ナメクジならノロイから狙いやすいって言ってましたよ?」 今度こそ頭からコケてしまう。 鈴鹿は大丈夫ですか?と何でコケたのか分からない様子でキョトンとしている。 どうも彼女は普通の女性とは感性がズレている気がする。 もはや乾いた笑いを浮かべるしかなかった。 「もう暗くなっちゃいましたね」 「そうですね。送っていきますよ。女性一人で夜道を歩かせたら男の恥ですからねっ!!」 そう言ってリーはキラーンと眩しい歯を見せる。 こういう所は全く変わっていない。 また、普通の女性だったらどー頑張ったって引く所を顔色も変えずに「そうですか。ありがとうございます」と普通に返事している鈴鹿も変わっている。 まぁそんな事はどうでも良い。 ドンッ 「!?」 「今のは!?」 「西方向15キロ地点ですね・・・この異常に大きいチャクラは・・・・」 「行ってみましょう!!」 「ええ」 罪深き者たちが・・・・ 「何だ今の音は!?」 集まってくる・・・・ 「綱手様!急いで!」 「ったくこんな時に・・・・・!」 そして集まって来た者たちに対して。 「今晩は・・・・・・」 そう気まぐれのように挨拶したのは。 月に映える美しき毛皮を持ちし白狐。 *****おまけSS**** 鈴鹿「・・・・・・・・・・・」 ネジ「・・・・おや?珍しいな、サスケが目の前を通ったのに何もしないなんて」 鈴鹿「日向上忍・・・私の事爆弾魔か何かと勘違いしてませんか・・・・?(ちょっと怒怒怒怒怒)」 ネジ「実際似たようなもんだろ(内心怯怯怯怯怯)」 鈴鹿「ちっ・・・・(舌打ち)まぁ理由はあるんですけどね」 ネジ「ほう?」 鈴鹿「だってもうすぐ ネジ「春野のためかよ・・・・・(ガックリ)」 鈴鹿「勿論です(キッパリ)じゃなかったらこの新作の焙烙火矢を・・・・」 ネジ「(・・・このままじゃどんどん危険な会話になる!逸らそう!話逸らそう!)そういや、お前、随分仲良かったが、リーの事好きなのか?」 鈴鹿「そうですね。間違いなく、好意を向けるに値する人でしょう」 ネジ「スッパリ言うな・・・(呆)」 鈴鹿「彼の良い所はどんなに駄目だと言われても決して諦めないその根性にあります。それは我が鋼の里の気風とも相通ずるものがあります」 ネジ「そういえば施条銃の開発は最初は無謀極まりないことと言われていたんだったな」 鈴鹿「そーなんです。それを根性で何とかしちゃったんですよ。うちの里は」 ネジ「だからエリートとかそういうのが嫌いだと。」 鈴鹿「嫌いですね。特に生まれ持っての才能とか出自とか血筋とかに拘ってる人間は嫌いというより軽蔑に値します」 ネジ「へ、へぇ・・・・」←何だか昔の自分のことを言われているようで後ろめたいらしい 鈴鹿「だってそうじゃないですか。血筋や天性で全てが決まるなら、『下克上』とか『昔神童今凡人』なんて言葉も存在しないでしょう?」 ネジ「うううううう・・・・(正論過ぎる)」←ますます自分が責められているようで良心が痛いらしい 鈴鹿「なのに、エリート生まれってだけで威張る人間が許せないだけです。」 ネジ「ううううううううううう・・・」←思考のドツボにはまったらしい。 鈴鹿「?どうしました?」 ネジ「うううぅぅぅうっぅっぅ・・」←何だか・・・もういいや 鈴鹿「・・・・何だか日向上忍は使い物にならないのでこの辺で。次回をお楽しみに!」 *****あとがき よーやくリー君出せました〜(安堵) 良かった〜キャラ紹介に出すだけ出しておいて肝心の話に出せなかったらどーしようかと・・・ ちなみに二人は特上なのでナルが行方不明な事は知りません(だから呑気にしてるのだ) しかし・・・・おかしい、鈴鹿は最初冷静沈着なキャラだった筈なのに。 いつの間にこんな天然型ボケキャラに!? 話の方は前半がようやく佳境に入りました。 え!?まだ続くの!?なんて冷たい事は言わないで下さいね・・・・? |
KUROKUさんからいただきました!3話。
ヒナタとネジが切ないですね。
ナルトに対する思いの強さが伺えました。
普通なら帰ってこないと分かっている状況でも「帰って来い…!」と言わずにはいられないというのは…。
ラストの気になるキーワード。
『罪深きものたち』。罪は何を指すのでしょうか。
ナルトと闘っていた葛葉さんが木の葉にきて、ナルトはまだ帰らずというのも気になるところです。
そして、待ってました!
リー君の登場!
最高です!
今後も活躍の予定はあるのでしょうか?
お楽しみのおまけ小説。
今回は行事のおかげで助かったサスケですが、奴がまともにそういった行事に参加するとは考えにくいのですが、どうなるのでしょうか?
やっぱり、爆撃を受ける運命なのか!?(笑)
気になります。
サスケが無事だったので、今回の1番の被害者はネジ兄さんでしたね。
古傷に塩を塗りこまれる感じでかなりのダメージだったようで……
がんばれ!ネジ!
最後に。
せっかくのホワイトデーネタなのにアップが遅れてすみませんっ!(汗)
2004/3/23