里人たちは息を呑む。
その嘗ての悲劇を彷彿とさせる、葛葉の姿に。
満月を背景に佇む美しき狐の姿に。

「狐・・・・・!?」

「今晩は・・・木の葉の人たちよ。我が名は葛葉。18年前、理性を無くしこの里を壊滅状態へと追い込み、4代目火影の手によってその息子、星宮ナルトへと封印された・・・・・九尾の娘」

其の言葉に里人達は息を呑み、そして憎憎しげに彼女を見据えた。


「九尾の仔だと!?」

「今更何をしに来た!?」

「親父と同じようにこの里を襲うつもりか!?」

「理性を無くした?今更、自己弁護か?!お前の父親がしたことは絶対に許さない!!許されるわけが無い!!」





「黙りなさい!!」

その場に雷鳴のごとく、轟くように声が響いた。

「言いたい事はそれだけ!?恨み言しかいえない訳!?それしか頭に無い訳?よーく分かったわ。やっぱりあんた達はただの」


「卑怯者ね」

「卑怯、だと!?」


「卑怯以外に何と表現すればいいわけ?かつて木の葉が父によって壊滅状態になったのは守る側の忍達が力不足だったから!父を倒すのではなく、封印したのは4代目がそれしか出来なかったから!倒すような力が無かったから!祠や岩のような無機物では無く、子供に封印するような能しかなかったから!違う?それを棚に上げて、何も知らない、何も分からない生まれたばかりの幼子に全ての責任を押し付けたのは一体誰?わかっているはずなのに彼を憎しみの対象としたのは誰?コレを卑怯以外の何と表現すればイイワケ?」


「ぐっ・・・・・・」


正論過ぎる彼女の言葉に里人たちは押し黙る。

「・・・・・・そんな様子じゃ知ろうとも思わなかったでしょうね。かつて父が何故この里を襲ったのか・・・・・その理由さえ」


「理由・・・だと?」


「そうよ」





里人達が次に見たのは、妖しく輝く、葛葉の紅い双眸だった。

白い光が突如自分たちを包む。















(ここは・・・・・?)

次に眼に映ったのは見た事も無い森の中の風景。

「ZZZZZZZZZZZZZZ・・・・・・・・・」

ふと、そちらの方を見ると、先程まで自分たちの前で立っていた筈の葛葉が気持よさそうに寝息を立てていた。



何かが猛スピードで近づいてきている。


―――――優しい記憶―――――


****ここからは葛葉の視点となります******


「あねうえ、あねうえ〜v」

ぼすっ

「ぐぇ」

突然駆け込んできた一陣の風は受け止める暇もなく、白狐の脇腹にぶち当たった。

「あねうえ、あねうえ、あねうえ〜v」

「ス〜ピ〜カ〜〜〜、ゴ〜ン〜、ア〜ス〜ナ〜(怒)」

飛び込んできたままひたすらじゃれ付いてくる3匹の仔狐の首根っこを青筋立てて、葛葉は掴む。

「いきなり飛び込んでくるんじゃないって何べんも言ってるでしょうが!!あたしだから怒られるぐらいで済むけど、兄上たちだったら殺されてるわよ!?今頃!」

「えへへ〜v」

「い〜じゃん別に〜葛葉姉上だから飛び込んできたんだぴょ〜んv」

「そ〜そ〜」

「まったく・・・・・」

反省の色が全く見えない3匹に葛葉は思わず溜息をもらす。
だが、ここは誇り高き妖狐一族のメンツに賭けてキチンと言い聞かせなければならない。
そう拳を固めて決意したのだが

「ねぇねぇあねうえ、ぐるぐるはっぱがあたまについてるのってなに?」

その思考はまだ舌足らずな妹のスピカに邪魔された。

「グルグル葉っぱが頭に付いてるの?ナニソレ?」

まだ幼い弟妹達の言葉は訳が分からず、頭が?????マークで一杯にになってしまう。

「う〜ん????????」

「わかんないの?」

(うっ。そんなウルウルおめめで見ないで頂戴〜困った〜コマったわ〜)



だが思わぬ所から助け舟はやって来た。

突如その場に響き渡る


「それは恐らく木の葉の忍・・・人間だな」

荘厳な・・・・森に響き渡る声。


『父上!!』



9つの尾、全身を纏う金色の毛皮。



森の王者、妖狐族が長



金毛白面九尾之狐。



その圧倒的な存在感はもし生身で人間が対峙したら腰を抜かすだろう。


だが


「ちちうえ〜v」

どすっ

「うごっ!?」

怖いもの知らずの子供たちは全く恐れることなく、父親に姉と同じく飛びついていった。

「ちちうえ〜このはってな〜に?しのびってな〜に?」

「ニンゲンって2本足で立ってるあの変な動物?」

後者のセリフは3兄弟の中では一番利口なゴン


「そうだ。木の葉というのはだな・・・この森を少し出た所に存在する集落の名前だ。忍というのはだな、そこに住み着いて中心を担っている人間達の職業名だな。」

「ああ、あの無礼な輩どもですね? 父上に挨拶もせずに勝手に妖狐一族が代々守ってきた土地を使って・・・・」

「葛葉」

そのまま人間の悪口を言い続けそうになってしまったが、父の表情は『子供たちがいるのにそれ以上言うな』と言っていた。

「それで、どうしてそんな事を聞いたのだ?」

九尾は一族たちの集まりで長として見せているような厳しい表情をせず、優しい表情をしていた。
この三つ子を産んだ後、九尾の妻、つまり葛葉の母は急逝した。
よほど、久しぶりに生まれた、しかも愛する妻の残した最後の我が仔が可愛いと見える。

「うんっ!いつもあそんでるとこでみたからなんだろとおもって!そしたらおさかな(・・・・)くれたからおともだちになってもいいのかなっておもって!」

「ちょっと待ってあんた達人間に近寄ったの!?」

「うん、そーだよ?おさかなおいしかったv」

「バカ!!人間はね・・・・・・!」

「まぁいいじゃないか、葛葉」

「父上!?」

その言葉に思わず父の正気を疑ってしまう。

「ただし、迂闊に近寄ってはならんぞ。ヘタをすると大怪我を負わされるかもしれんからな?」

「うん!わかった!」


そう言って元気に走り去っていく弟妹達を見て、微笑む父に思わず声を張り上げてしまう。

「父上!!何を言ったか分かっておられるのですか!?人間がどれ程危険な存在か・・・!」

「まぁ、そう言うな、葛葉よ。私が以前言った言葉、忘れたわけではあるまい?」





どこからともなくやってきた人間たちがもともと妖狐族のものであった森を勝手に切り開き、集落を造り始めたとき、兄たちを始めとする一族の者達は力による制裁、または集落の存在する辺りの森を枯らして干上がらせる事を主張した。

妖狐族全員の力を持ってすればそのくらいの事は容易い。
しかし、それを諫め、見守る事を決定したのは父だった。
皆は口々にこういったものだった『何故あんな下等な生き物を庇うのか』と。
葛葉は一族の者達を好きになる事は出来ないが、その言葉を間違っているとは思わない。
でも・・・・・・
以前その事をはっきりと父に言うと、父は苦笑しながらある場所に連れて行ってくれた。

そこは木の葉を、一望できる場所だった。

そこから見た景色は・・・・一言で言えば美しかった。

初めて自然以外の、人工物を、美しいと思ってしまったのだ。

『私はこの里が大きくなっていくのを見てみたい。と言うより人間がどこまでやれるか試してみたいのだ。無論、皆の言うように人間は愚かな生き物なのかも知れぬ。だが、何も確かめずに決めてしまっては余りにも哀れではないか?』

そう言いながら、木の葉を愛しそうに見つめていた父の顔を今だ忘れる事はできない。
そして一生懸命に働いていた人間たちの姿も。

それからだろうか。
もともと放浪癖の酷かった自分が人界もうろつくようになったのは。
しかし、幼い弟妹達が人間に近づく事にいい顔など出来る筈も無い。

「あの仔達には人間に偏見を持たずに育って欲しいのだ。なぁに、何か問題が起こっても私が何とかするさ」

気楽に言ってくれる。

「・・・・・やっぱり・・・・父上は甘すぎます」

妖(あやかし)の長としては適切な行動ではない。
だから言わずには入られなかった。


「ホント・・・・・父上は甘すぎますよ・・・私のことだってそうです。こんな・・・まっちろけの出来損ないのおちこぼれを娘として認めておくなんて・・・・」

「葛葉」

気が付けば九尾は頭の上にポスポスとその前足を乗せて叩いていた。
本人は恐らく撫でているつもりなのだろう。

「父上・・・・?」

「そう自分を卑下するような発言は許さんぞ。確かにお前は兄弟の中では弱い。それはアルビノ種として生まれた者の宿命でもあるだろう。だが、お前はお前の武器があると言っただろう?」

「智の力・・・・・・・・・・?」

「そうだ。何者にも負けない知識、技術力。それがお前の武器だ。現に今の妖狐族の中でお前ほど細かく印を組める者は存在しないだろう?どんなに周りがお前を貶めようとも、お前は我が娘だ。それは未来永劫変わる事はない。」

「父上・・・・・・・」

自分が生まれた時、同じ時に生まれた兄弟たちは皆死産だった。
自分もアルビノ種で直ぐに死ぬだろうと言われてきたが、何の因果か自分だけが生き続けたのである。
幼い時は一族の者たちに出来損ないよ落ちこぼれよと言われて何度も主に兄達と掴みあいのケンカとなった。
歴然とした力の差に影で泣いた。
その父の言葉を頼りに今日まで生き続けてきたと言っても過言ではない。
また泣きそうになる。

ぽすぽす

「あ〜!!あねうえがなでてもらってる〜!!」

「ずっりー!!オレもオレも〜!」

・・・・今度は泣く前に弟妹達に邪魔されたが。

「ちちうえー!スピカもなでてなでて^_^」

「はいはい。順番だぞ。兄弟げんかは良くない」


巧向こう見ずと言うか・・・・突っ込んでくるだけの弟妹達を巧く捌いている父を葛葉はほほえましく見守っていた。


*************


「ところで父上」

不意に葛葉は聞いた。


「今日は北の一族の者達たちと会合ではなかったのですか?」

何気なく聞いただけだったのだが
鋭い彼女は父の頬をツゥ・・・と流れる冷や汗を見逃してはいなかった。

「サボったんですね・・・・・・・・?」

「いや・・あの・・その」

「すぐに戻って下さい(怒)」

「はい・・・・・・・・(泣)」

父親の威厳も何もあったもんじゃない(笑)



だけど、少しだけ・・・・・・・・・・

父の言葉を信じ、人間を信じようという気にはなった。


それは

悲劇の起こる前のそんなひと時。





****おまけSS

――――人生色々にて

アスマ「ようカカシ」

カカシ「あ、熊」

アスマ「熊ってゆーな!!って何でそんなに顔腫れてるんだ?」

カカシ「ふっ・・・・・・ちょっと甘酸っぱいレモンの道に迷ってな・・・・ブツブツちょっとからかっただけなのにさ。螺旋丸なんてさ・・・・

アスマ「???????」



――――――暫しの沈黙

カカシ「そーいえばさーアスマ紅にホワイトデーのお返しあげた?」

アスマ「ああん?何でンな事聞くんだよ?」

カカシ「いやー何かうちのサスケがさ。蒼白な顔してW・Dバーゲンにいたから気になっちゃって。で、どーだったのさ?」

アスマ「幾らなんでもチロルでお返し要求してくるのって間違ってるだろ」

カカシ「じゃ、しなかったんだ」

アスマ「そーゆうお前はどうなんだよ。お前も一応貰ったんだろ?」

カカシ「俺も板チョコでお返し要求してくるのって間違ってると思う」

アスマ「だろ?」

カカシ「うん」





???「こんにちは〜〜〜」

アスマ「ん?お前は紅んとこの・・・・・・」

カカシ「ヒナタ?」

ヒナタ「はい、ちょっとご相談があって・・・・」

アスマ「相談?俺はともかくカカシに?」

カカシ「ちょっと熊、それってどーゆー意味さ?ま、俺等で良かったら相談に乗るよ」

ヒナタ「実は・・・・・とっても大事な特別重要任務を請け負ってしまって・・・・私に遂行できるかどうか分からなくて・・・・・(涙目)」

カカシ「う〜ん、成る程、まぁ任務の内容は聞かないケドサ、俺が言えることは一つだね」

ヒナタ「?」

カカシ「サクッっとやっちゃえv」←暗殺任務だと思っている

アスマ「お前・・・・それじゃあアドバイスになってねーだろ、まあ俺も一つしか言えねーな」

ヒナタ「????」

アスマ「考えすぎるな」←やっぱり暗殺任務だと思っている

カカシ「熊こそ全然アドバイスになって無いじゃんかーーーー!!」

その後ギャイギャイと口論に突入


数分後

アスマ&カカシ『とまあ。こんな感じで』

ヒナタ「結局まともなアドバイスじゃなかったけど・・・・でもそうですよね!躊躇う必要なんて何処にもないんですよね!!」

アスマ&カカシ『うんうんそうそう』

ヒナタ「ありがとうございます!!お陰で吹っ切れました!とゆーわけでコレをどうぞ」

ヒナタ、綺麗にラッピングされた小箱をカカシに手渡す。

カカシ「お?お礼?そんなに気を使ってくれなくてもいいのにv」

ヒナタ「いいえ!!それじゃあ失礼します!」←何故か小走りで立ち去る

アスマ「う〜んいい子だよなぁ。うちのいのとかとは大違いだぜ」

カチッカチッカチッカチッカチッカチ

カカシ「ほんとにねぇ・・・・ナルト取られたんは悔しいけど・・・・ん?」

カチッカチッカチッカチッカチ・・・・

アスマ「ほんとにあのしおらしいトコを見習って欲しいもんだな。ん?どした?何固まってるんだ?」

カチッカチッカチッカチッカチ・・・・

カカシ「ねぇ・・・・さっきからカチカチ音しない?(汗)」

カチッカチッカチッカチッカチ・・・・

アスマ「ん?そーいや時計の音にしちゃ煩いな。何の音だ?」

カチッカチッカチッカチッカチ・・・・

カカシ「この・・・・箱の中から聞こえてくるんだけど・・・・・?」

アスマ「へーーーー煤i ̄□ ̄;)??」

カチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

閃光

どっかーん!!!


外にて

サクラ「オー良く飛ぶわね〜♪」

鈴鹿「火薬が破裂すると同時に爆風の威力を上げるように混ぜる硫化チタニウムの量を調節しましたから」

紅「さすが鋼の里きっての技術者・・・・協力感謝するわ」←握手

鈴鹿「いえいえ。私も折角造った『W・Dお仕置きスペシャル』が無駄にならなくてよかったです」

ヒナタ「ただいま戻りましたーーーー!!」

紅「ヒナタ。特別任務ご苦労様(何故かちょっと尊大)」

ヒナタ「いいえ〜でもちょっと可哀想だったんじゃ・・・・・」

紅「ふっ・・・ギブアンドテイクの意味を知らぬ愚か者にはこのくらい丁度いいのよ・・・・ヒナタ、あんただってナルト君からのケーキ喰われたんだからもっと怒ったっていいのよ!」















物陰にて


キバ「コレで分かっただろ?サスケ」

ネジ「俺達の忠告通りにしていなかったらお前がああなっていたという事だ」ぽん←肩に手を置く。

シノ「女性は怒らせると怖い」ぽん←やっぱり肩に手を置く。

シカマル「めんどくせーけど同感」

ナルト「鈴鹿・・・サクラちゃんの事結構気に入ってるからなぁ・・・・(遠い眼)」

サスケ「・・・・・・・・」←ガタガタブルブル蒼白中




********あとがき
ナルトが出ない〜ネジが出ない〜ヒナタが出ない〜(泣)って私が書いてるんだった。
当分この状態が続きますがご勘弁を(ぺこり)
2番目にこの話で書きたかった部分ですので(1番目は勿論ナルヒナイチャラブv)

おまけSSはちょっと『RAKUGAKI』さんのホワイトデー漫画に触発されて一気に書ききったものです。

補足。
前回サスケはネジ達の忠告に従って慌ててサクラちゃんにホワイトデーのプレゼントを買ったんですよ。
それにサクラは満足しちゃったんで鈴鹿はお仕置き用に造っておいた爆弾が無駄になっっちゃったんですよね。
そこへ紅が協力を持ちかけてきた・・・・と。



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KUROKUさんからいただきました!第4話。
九尾パパがとってもいいキャラでした。カワイイvv
幸せそうな家族に見えるだけに、この後起きる悲劇がより痛々しく感じられます。

オマケss
楽しみにしていましたvv
女たちの報復…お、恐ろしいですねっ(笑)
最強です。
そして、サスケが前回顔色が悪かったのは脅しが入っていたわけではなく、
友達思いの友人たちから忠告を受けて、
もし、サクラが気に入らなかったらどうしよう…とかヒヤヒヤしてたせいだったんですね(笑)。

ありがとうございました!次回も楽しみにしていますvv

2004/4/4