***少し猟奇的表現が入ります。苦手な方はご注意下さい。


人間は優しい      嘘。


人間と妖怪は共存できる      嘘。


人と妖は分かり合える      嘘。






ああ 呪わしや呪わしや。


肉を持つ身は呪わしや。








「――――――――っ!?」

最初に気づいたのは九尾。
辺りに微かに臭うは血臭。
漂うは過ぎるほどの静寂。

「・・・・・・父上?」

娘も異常に気づいたようだった。
森中が怯えている。
何かに。


嫌な予感を振り払うように彼は走り出した。
娘が後ろから付いてくるのを感じる。
より血の臭いが濃くなっていく。
そして
最も臭いの濃い場所に飛び込んだ時。

「―――――――っ!?」

見たものは。




3匹とも。

毛皮を血に染めて、クナイで裂かれた腹から内臓が飛び出している。
尾も執拗に切られ、裂かれている。

「ゴン・・・・・・・・・・・・・?」

眼に突き刺されているのはなんだろうか。

「アスナ・・・・・・・・・・・・?」

石ででも殴られたのか、背骨が折れている。

「スピカ・・・・・・・・・・・・?」

片耳は千切れ、足は小さな棘が無数についた紐できつく縛られている。
右の前足は切り落とされ、紐にぶらさがっていた。
かといって他の足が無事なわけもなく、切り落とされていないまでも、大きな傷がいくつもある。


ぽたり


ぽたり


そして
我が仔が吊り下げられた木の根元には。

まごうこと無き、木の葉のマークが刻まれたクナイ。

「・・・・・・・・・・嘘、でしょう・・・・・・?」

娘が呆然と呟くのが聞こえる。


「きゅう、びさま・・・・・・」

足元を見ると、そこには昔から妖狐族に仕えてきたテンが恐々と立っていた。

「ダレが・・・・・・」

声が掠れるのが分かる。

「はっ」

「誰がやった・・・・・・・・・・?」


誰がやったのかなど、聞かずとも一目瞭然だった。

いやしかし

まさかそんな。

木の葉を信じたいと願う気持がそれを認識する事を拒む。
ひょっとしたら木の葉の仕業に見せかけようと他国の忍がやったのかもしれないし。
決め付けるのはまだ早すぎる。

だが


「人間が・・・・・木の葉の忍が・・・・・・御仔様達を・・・・・・」

「間違い、ないの・・・・・・・・・?」

娘がヒューヒューと喉から息をするのも苦しげに問いかける。


「臭いも額宛もまがう事無き木の葉の者でございました・・・・・!あやつら!御仔様達をさも楽しげに!遊んでいるような表情でまだ生きている喉を切り裂いて・・・・・!」


「もう良い!!!!!!!!」



自分の怒号にテンは「ひっ」悲鳴を上げて物陰に下がった。

それは気にせず、吊り下げられた木から我が仔を降ろす。
そして冷たく強張った体を舐めてやる。
子供特有の滑らかさを持った毛皮は血でごわつき。
可愛らしくクリクリしていた眼は何かが突き刺さったままギョロつき。

そして何より。

百面相といっても過言ではないほどクルクル良く動いていた表情は恐怖と、驚愕のまま動かなかった。

何故

何故

ドウシテ?

マエハアンナニヤサシカッタノニ

チチウエガダイジョウブッテイッタノニ


恐らく我が仔達はそう思いながら絶命したであろう。

痛かっただろう。

苦しかっただろう。










嗚呼










黄昏の空

朧月夜










東雲

紺碧の空

暮れ方の朱

星月夜










彼者誰時

浅葱の空

逢う魔が時



逢う魔が時



オウマガトキ



大禍時



心を惑わす夕暮れの空










はっきりと分かった事は唯一つ。
自分は裏切られた。
信じていたものそのものに。

アノコタチハオモシロハンブンデコロサレタ



「あぁ・・・ああ」


ナゼコンナコトニナッタ?


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!?




「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




お前があの子達にもっと厳しく注意していれば
人間などに近づいてはならぬと言っていれば
人間に隠れ里など作るのを許していなければ



コンナコトニハナラナカッタノダゾ?



自分の耳元で悪魔が囁く。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

パキッ・・・・パキパキパキ

「父上・・・・・・・?」

娘が戸惑うような声を出しているのがはみ出した感覚の果てから聞こえてくる。
自分の体からチャクラが異常なほど溢れ出している。
穏やかそのものだった瞳が獣の、バケモノの
それに変化していく。

ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――!!!」

九尾は空に咆哮した。

それはまさしく獣の王に相応しい咆哮。
激情が、森すらを振動させる。
ぼこっ、ぼこっと、地面のあちこちが膨れ上がる。

『父上っ!待って!!行かないで!!』

もう、何も見えない
キキタクナイ
ひたすら目指す
あの仔達を屠った者の入る場所へ。
愛しい我が仔を殺した者への制裁を。

そこから先は・・・・・・何もかもが、
曖昧にしか映らなかった。










*************


痛む足を引きずって、引きずって葛葉は父の匂いの後を必死で辿った。

父が起こしたチャクラの嵐は周りの動物たちまで巻き込み、殺しかねないものであった。
直ぐに結界を張り、皆を守る。
その為、足にチャクラの攻撃を受けてしまった。
父は今、眼に映る全ての物を敵と認識しているだろう。

早く止めなければ。
手遅れになる前に。

父がただの殺戮者と化してしまう前に。

ハヤク・・・・・・・

しかし。
葛葉が目的地、木の葉にたどり着いたときには。
何も残っていなかった。

何も。

木も。

花畑も。

心のそこから美しいと感じた人里の景色も。


そして

父も。

匂いで分かった。


父は・・・・・恐らく魂を封印されたのだ。

そして
肉体は。
血の臭いが示すように
バラバラに、解体されたのだろう。
あの人間たちの手で
憎しみの篭った眼で
毛一本も残さずに
葛葉は涙すら出なくなったその顔を地面に擦り付けた。
遺体すら尊厳を持って葬られないのか?

それとも
人間にとっては我々はその程度だという事か!?
何のために・・・・・・・・・・・
父はこんな奴らを信じ続けてきたのだ!?
ナンノタメニ・・・・・
何のために自らの土地を与え、好き勝手しているのを笑って許していたのだ!?

「ああ・・・あああ」

この里が大きくなっていくのを愛しそうに見ていたのは何のため?

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



バカだ!!
父上はバカだ!!
人間なんて信じたから!!
人間なんて生かしておいたから!!
だからこんな事になったんだ!!

心の何処かで違う・・・・父の言葉を忘れないで・・・・と微かに叫ぶ声が聞こえていてももはや止めようが無かった。

葛葉は吼えた。
それは、怒りというよりも。
悲しみの混じった慟哭だった。

幾程叫び続けたであろうか。

「・・・・・・・・お父さん」

やがて掠れた声で呟く。
痛む足を引きずりながら。
彼女は森の奥へと消えていった。










*****おまけSS

カカシ「・・・・・・・・・・・・・・」

鈴鹿「・・・・・・どうしたんですか?黙りこくっちゃって」

カカシ「シリアス過ぎてすっごく居辛い、居辛いよぉ〜」← 体クネクネ

鈴鹿「やめて下さい、三十路のオヤヂが。不気味すぎて気絶者が出ます(きっぱり)」

カカシ「しくしくしくしくしく・・・・・・・(涙)」

鈴鹿「(溜息ついて)そんなんだから皆さんからヘタレ呼ばわりされるんですよ・・・・・ところでご存知でしたか?」

カカシ「?何が?」

鈴鹿「今、KUROKUが非常に困ってるらしいですよ」

カカシ「いっつも困ってるような奴だからねぇ。今回は何が原因?」

鈴鹿「さり気なく酷い事聞いたような気がしますけど(まぁ概ね当たってますが)まぁいいです。ほら、今WJでうちは上忍、滅茶苦茶不気味になっちゃった上に本格的に音行きそうじゃないですか。『本当に音行ってしまったらこの話が成り立たな〜い』と困ってるらしいです」

カカシ「だよねぇ〜うう(涙目)サスケったらどうしてあんな子になっちゃったのか・・・」

鈴鹿「私が思うに」←人差し指を立てる

カカシ「?」

鈴鹿「『誰かさんの』教育の賜物ではないかと」

カカシ「(グサグサグサグサグサグサグサグサッ!!)ううううううううう」←カカシ100のダメージ

鈴鹿「あららら、落ち込んじゃいましたか?」

カカシ「君ってさ・・・・・美人だし、くの一としても優秀だし・・・・きっとその毒舌がなけりゃあもっとモテるんじゃない?」←床にののじ書きながら

鈴鹿「ご忠告ありがとうございます。でもご安心下さい。私、エリートは嫌いですけど、努力型の人間は大好きですから(にっこり)」

カカシ「あ、そう・・・・・・(ふっ、つまり俺も嫌いな部類ってことか)」←自分がエリートだとさり気なく主張している。

鈴鹿「・・・・・こんな人が付きっ切りでいたから、うちは上忍もヘタレになってしまったんじゃぁ・・・・・?あ、ちょっとあの人が可哀想になってきちゃった(呆)」

??「鈴鹿さん!!!」

鈴鹿「(くるっ)あ、リーさん、どうなさったんですか?」

リー「はい!この前、鈴鹿さんが興味があると言っていた映画のチケットが手に入りましたので、一緒に行きませんか?」

鈴鹿「え、いいんですか?」

リー「はい!!鈴鹿さんには色々お世話に(銃の講師など)なってますからね!!お礼です」

鈴鹿「う〜んでも・・・・・・・・(ちらり)」

カカシ「ふふふふふふふ。そうだ、俺はエリートなんだ。エリートなんだ」←自分の世界にトリップ中

鈴鹿「・・・・・・・まぁいいか(放置決定)あ、ならその後夕飯ご一緒しません?良かったら私が作りますよ?」

リー「え!いいんですか!?」

鈴鹿「はい(にっこり)」←好きなタイプにはとことん優しいという得な性分

リー「ありがとうございます!!さあ!!行きましょう!」

リーに手を引かれ去る鈴鹿、その後には別世界を旅行中のカカシが残される。





物陰にて

ガイ「青春しているな!!リーよ!(号泣)」





* * あとがき
ううううう・・字がムダに多くてすいません(汗)
だってこー、何と言うか・・・シリアスで追い詰められた感じを出したかったんですよ〜(涙)



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KUROKUさんからいただきました!第5話。
予測していたこととはいえ、辛いエピソードでした。
もう、九尾パパの苦しみとか、怒りとか、絶望とかが伝わって来て…。
さて、この真実を知って、里人はどう反応するのか?
そして、ナルト達は…?
次回も楽しみにしています!!

そして、本編のシリアスとは180度方向性が違うオマケSS!
笑いました。
ヘタレなカカシ。リー君(ガイ付き)。最高です(笑)

2004/4/18