「・・・・・ナルトくん・・・・・・!」

やはりナルトがいたのは彼が子供のときによく使っていた森の中の練習場所だった。
無用な諍いを避けるために誰にも修行場を明かさなかった彼が、「内緒だってばよ?」と言いながら自分に教えてくれた時、舞上がるほど嬉しかった事を覚えている。

そしてその場所で自分は告白されたのだ。



******憎しみの輪廻****



「やっぱり・・・・ここだった・・・・」

「ヒナタ・・・・・・・・・・・・・・」

振り返った彼の顔は今まで見た事が無いほど、青白く、憔悴しきったように見えた。


「ナル・・・・・・!」

「憎かったんだよなぁ・・・・」

何か言わなければ。宜しく

そう思ったが、彼の言葉に声を飲み込む。

「俺・・・・憎かったんだよなぁ・・・・」

そう呟いた彼に思わずドキリとした。

「人の視線の意味とか・・・言葉の内容(なかみ)とか分かるようになってからは・・・・どいつもこいつも憎くってさぁ・・・何でオレ、生きてるんだろ?とか思って・・・・九尾のこと知ってからは・・・里の視線がますます冷たく見えて、でも理由が理由だから仕方ないってなるべく思うようにして・・まるでその代わりみたいに心の何処かで九尾のこと憎んで・・・・」


コイツさえいなければ・・・辛くて辛くてたまらない時、そう言い聞かせる事で自我を何とか保ってきた節が自分にはあった。

九尾が何故里を襲ったのかなど考えた事も無かったのだ。

「だけど・・・・・・!」

ナルトは悲痛な声を吐き出す。

「九尾も憎みたかったんだよなぁ・・・・・」

膝を抱えてがしがしと頭を掻き毟る彼は、とても痛々しくて・・・・

いつもより小さく見えた。

「葛葉と戦ったときにさぁ・・・九尾の記憶が・・・・・子供殺された九尾の驚愕とか、悲しみとか、裏切られたって気持とか・・・絶望とか、大鍋で頭ん中にぶち込まれたみたいになって・・・・」

だんだん泣きそうな声になってくる。

いや、実際には泣いてなどいないだろうが、そう聞こえてしまうほど、悲しげな声なのだ。

「痛かった・・・・!すっごく、痛かった・・・!」

様々な負の感情が渦巻き、鬩ぎ合い、自分を飲み込もうとする。

それはもう、憎いなどを通り越して、イタイとしか表現できない。

「なあ、ヒナタ、これは一体誰が悪いんだろうな?」



九尾か。



木の葉か。



一体どちらに罪がある?

どちらが責めを負えば良い?

相手(むこう)が悪いと決め付けて逃げてしまうのは楽なのだ。

それは恐らく最も簡単で・・・自分が傷つかない方法。

だが、ナルトにはそれができない。

相手を責めるのではなく、自分を責める。

それでも今のナルトが鮮烈な蒼を煌かせるのは、夢を見て生きているからだろう。

どれほど理不尽な痛みや苦しみを受けても、なおも高い空を目指してはばたこうとする。

ヒナタはそんなナルトだから好きになったのだと思う。

だが、今目の前にいるナルトはどうだ?

疲れたような表情を浮かべる彼は。



「ヒナタ」

ナルトは然りと真剣な表情でヒナタを見つめた。



「別れて」


「え・・・・・・・・?」

・・・・・・・・・・・今、彼は何と言った・・・・

「別れて、ヒナタ」

俺から告白しといて勝手だけど・・・・と彼は自嘲気味に続ける。

だが、ヒナタが聞きたいのはそのような事ではなかった。

「どうして・・・!?何で・・・・・!?」

何故急に別れようなどと・・・・・・!?


「ここに来たって事は知っちまったんだろ?俺、九尾が腹に入るって事、ずっと隠してたんだぜ?」

今までなら、里人の冷たい視線になら耐えてくることができた。

だが、ヒナタにまで同じような眼で見られたら恐らく自分は耐えられない。


「それだけじゃなくて、今回の事で自分が凄く、汚い人間だって思い知らされた。九尾の悲しみを知ろうともしないで・・・・九尾の事憎んで・・・・・・」

「こんなキタナイ人間はヒナタに相応しくないよ・・・だから・・・」

別れて・・・・・・?

そう言って彼は笑顔を見せる。

だがそれは。

(あ・・・・・・・)

里人に罵声を浴びせられるたびに彼が『造ってきた』

『偽物の笑顔』だ。



「何・・・・ソレ・・・・・」

ヒナタは自分の声が震えているのを自覚する。

「何なの・・・ソレ・・・・私の事、馬鹿にしてるの・・・・・・?」

「どうして・・・・そんな事言うの・・・・・・・」


「だから言っただろう?俺ってばきたな「だから何だっていうの!!」

ナルトは瞠目した。

ヒナタは肩を怒らせて、荒く呼吸をしている。

こんなに感情を露わにしている彼女は見た事が無い。

「憎んだから、怨んだからキタナイの?キタナイから何だっていうの!!それなら私だってキタナイわ・・・・!だって、私だって、憎しみを持った事があったもの・・・・!」

宗家から認められず、父からも疎まれる日々。

妹が生まれたことによって父は益々離れていった。

そんな中、ヒナタの中では己の力不足を恥じる他に、心の何処かで父を、妹を憎んでいたのだ。

でもナルトの真っ直ぐな姿を見ていて救われた。

ナルトがいたから自分は変われた。

ナルトがいたからここまで頑張れた。

「別れないから。絶対に。あなたが嫌だって言っても別れないから。」

いつもの内気な彼女が嘘のようだ。

「それに・・・・・・・」

ヒナタはそっとナルトの頬を両手で包み込む。

「私、言ったよね?あなたの柱でいたい。あなたの支えでありたいと」

妖と同居しているくらいで離れたりしないわ・・・・とナルトが思わず見惚れるほどに魅惑的に彼女は微笑む。

自分はこの少女を少し見縊っていたのかもしれない。そうナルトは思った。








何時から彼女の事が好きだったのか、自分でも正確な時間は覚えていない。

サスケがサクラに対して満更でも無くなってきたという噂を聞いた時それ程悲しく無かった自分に、ナルトはサクラへの想いが恋等ではなく、お姉さん、という印象が強かった彼女に決して与えられる事の無かった親愛の情を求めていただけなのだということに気づいたのだ。

それに気づいた其の日の午後、道でばったりヒナタと出くわした。

相変わらずモジモジして、自分が見つめると視線を逸らしてしまう少女にしかしナルトはあれ、と思った。この子はこんなに綺麗に笑う子だったっけ。と。

鈍くさかった自分が気づかなかっただけかもしれないし、中忍試験でヒナタが少しならずとも自信を付けた為かもしれない。

とにかくナルトは彼女の甘やかな微笑に見惚れてしまったのだ。

とても柔らかくて、穏やかで、そして太陽の光にすら淡く溶けてしまいそうなほど透明な。

自分でも現金なものだと思う。

それからずっと、彼女に気づかれないように(上忍の能力を最大限に駆使して)目線を向けていた。

ヒナタの視線が定まるようになり、怯えたような微笑みが朗らかなものへと変わり、俯けがちだった顔をあげていく様子をずっと自分が見ていたのを彼女は知らないだろう。




暫しトリップしていたナルトは自分の頬を穏やかに撫でる彼女の手に我に返った。

「そして『ナルト』は私を守ってくれるんでしょう?」

「・・・・・!」

初めて・・・・・・


初めて彼女はナルトの事を呼び捨てで呼んだのだ。

恋人という嬉しい関係になっても恥かしがり屋な彼女は相変わらず『君』付けだったのに。

それを可愛いと思いつつも、一抹の寂しさを感じていたのは確かだ。

「・・・・ははっ、敵わないなぁ、ヒナタには・・・・・あれ?」

ナルトは頬を何か暖かいものが流れているのを感じた。

「なん・・・っで/おっかしっいなぁ・・・嬉しい筈なのにさ/・・・なんで・・・・?」

ヒナタはそっと彼に囁いた。

「ナルト。私の前では我慢しないで・・・思いっきり泣いて・・・・・?」

「ヒナタ・・・・・・・」

泣きながら、顔をグシャグシャにしながら、彼は思いきり、ヒナタの細い体を抱きしめた。

「ごめん・・・・ちょっとだけ・・・こうさせて・・・・?」

ヒナタは黙ってナルトにその身を委ね、ゆっくりと彼のくすみ一つ無い綺麗な金髪を撫でた。


暫しのゆったりとした時間が流れる。





そして・・・・二人はそっと・・・唇を寄せた・・・・・









********おまけSS
エキサイティング!鈴鹿ちゃんの怖〜い火器講座☆



鈴鹿「さて、今日は第一回という事で比較的簡単な物を作りたいと思います」

キバ「何で俺たちが・・・・・・」

シカマル「めんどくせー」

チョウジ「お腹すいた・・・・・・・・・」

シノ「俺は割りと楽しみにしていたが・・・・・」

ナルト「あ、ネジも来たんだ」

ネジ「断ると出番がなくなるような気がしてな」

ズダダダダダダダダダダダダダダタン!!←機関銃

鈴鹿「講義中は静かにお願いいたします」←無表情

一同『はい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(怖)』





鈴鹿「今回作るのは木造船に乗っている敵や真下にいる敵に対して有効な『飛爛珠』という火器です。用意するの物は厚紙、ミョウバン、黒色火薬、針金、檜の薄板」


一同『フムフム』

鈴鹿「では早速作って見せますので私の手元を良く見ながら真似して下さい。」

一同『ジー』

鈴鹿「見過ぎです。まず厚紙を筒の形になるようにミョウバンの糊で張り合わせて、張子にして先は丸くします。その中に火薬を詰め、檜の薄板を切って羽根を四枚ほど作り、筒の下側の部分に貼り付けます。これで完成。」

一同『早っ!』

鈴鹿「だから簡単だと言ったじゃないですか」

シカマル「しつもーん」

鈴鹿「はいどうぞ」

シカマル「これって発射口も何も付いてないけどそのまま投げつければいいのか?」

鈴鹿「惜しいけど少し違います。寧ろ落とすか砲丸を投げるようにして投げて下さい。そうすれば丸い先の方から落ちて、割れると燃え上がります。だから下側にいる敵に効果があります」

キバ「ふーん(ポーンポーン)」←自分で作った飛爛珠を上に向かって放り投げている

シノ「キバ、危ないぞ」

鈴鹿「大丈夫です。火が付いていなければただの木の筒ですから」

キバ「あ!?(つるっ)」←手を滑らせて飛爛珠が窓の外へ!(注:ココは2階)




その下

サスケ「はぁ・・・・・(疲れたような溜息)」

サスケの脳内

(鈴鹿の奴!!いつもいつも事あるごとに俺を実験台にしやがって!!今日は何とか逃げてこれたから良かったが、また何時何処から狙われるか分からんからな・・・・せめて火器が着弾する前に視認できればいいんだが・・・・ん?)

サスケ、自分に向かって落ちてくる得体の知れない物を発見。

(また俺を狙ってきやがったな!!だが何時までもやられっぱなしだと思うなよ!!)

サスケ「火遁!!鳳仙火の術!!」


ボボッボボッボボボ!!


シュボ・・・・・←飛爛珠に火が付いた!!


サスケ「え?」


チュドーン!!!!!


ナルト「サスケ・・・・・」

シカマル「馬鹿かあいつは」

キバ「自分で火付けて自滅しやがった」

シノ「用心しすぎたのが仇になったな」

鈴鹿「不幸な事故でした・・・・・・・・」



一同『殆どお前のせいだろ!!』







****あとがき
は・・は・・・・は・・・
恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!(脱兎)
何なのこの馬鹿馬鹿しいほど恥ずかしい雰囲気は!?(書いたのアンタだろ)
何度見返しても恥ずかし過ぎる!!
いっそ消したい(でもそれやったら話進まない)

ナルトは自分で思ってるほど九尾の事憎んでる訳じゃないんですよね。
寧ろ九尾からすればまだまだ生ヌルイわぁ!!ってな感じで。
でも九尾の悲しみを知ったナルトにはちょっとでも憎んでしまった事が許せなかったんですよ。
ってかそんな解説要るような小説(もん)書くなよって感じですが。
ヒナタが別人ですいません。


さ、次は狐親子だ。



戻る     次へ

KUROKUさんからいただきました!第7話。

まず、頂いた小説を開いてドンと目をひいた題名に驚きました。
「憎しみの輪廻」って!
すっかりラブラブ編だと思っていたので「憎しみ」とは…
確かに後半はラブラブでしたが。

自分に厳しすぎですね、ナルトは。
自分は汚いだなんて。
じゃあ、他の里の人間はどうなってしまうのでしょうか?
九尾側の事情も無視した上に、理不尽にも子供を虐待してきた里の人間は。
ナルトが汚かったら、彼らは救いようがないぐらい汚れきっているということに…。あわわ。

後半は本当にラブラブで……
まさに恋愛小説!
惚気あり、恋人の呼び方が変化というイベントあり!
ごちそうさまでした。

オマケ小説
面白かったですv
鈴鹿さんも相変わらずギャグ担当・最恐キャラですし。

やはり注目すべきは結局気の毒な役回りなサスケ(笑)
火器に火遁はまずいでしょう。
水遁で導火線を鎮火するとか、風でも使って遠くに危険物を追いやるといった思考はないのかしら??

ありがとうございました!
忙しくて大変かと思いますが、続き楽しみにしています!
2004/6/16