***** 「ここよ」 そこは、葛葉が里人に夢現の中で見せた森の中。 あの悲劇の舞台。 「本来あたし達妖狐族は墓を作らないんだけどね・・・・・あのままにしておくのはあんまりだったし・・・・・・」 そう言って葛葉の示す先には3つの小さな石が並べられていた。 「でも驚いたわ〜いきなり『墓参りがしたい』なんて言い出すんだもの、唐突よね」 「アンタの方が唐突だったと思うけど?いきなり戻って来て『アタシと口寄せの契約しない?』な〜んて」 絶妙な口調で自分を真似るナルトに葛葉大爆笑した。 ***新たなる歩み*** 『口寄せ契約?』 ナルトはキョトンとした様子で葛葉を見つめた。 『何でまた急に?』 『悪い話じゃないと思うけど?あんたあの有名な大蝦蟇と契約もしてるんでしょ?だったら私を呼び出すことも不可能じゃないと思うわ』 『だけど・・・・それはあんたの一族にとっては裏切り行為になるんじゃ・・・・』 『アタシはね、弟達には慕われているかもしれないけど、上の連中からは元から嫌われてるの。このままアタシがあいつらの元に行って『人間たちと和解できましたよ〜』って言ったところで信じてもらえる筈が無いわ・・・・だったら、アンタに力を貸すのも悪くはないと思ったのよ。アタシはアンタが火影になれるように力を貸して火影のアンタの剣や盾になる。アンタは火影になったら忍や里人の教育を徹底して二度ともうあんな事が起こらないようにする。 ナルトは暫く黙りこくっていたが、顔を上げると、にっこりと笑う。 『約束する。人間と妖怪が共存できる道を見つけると。分かり合えるように努力する。』 『・・・・・言うじゃない・・・・・』 大きく出たナルトの言葉に葛葉は苦笑した。 「取り合えず、綱手のばあちゃんに謂われたとおりの手順で巻物を作ったけど・・・・・・コレでいいの?」 すっ・・・とナルトが差し出した巻物を葛葉はその場で広げ、中身を確認した。 「フム、アンタの血判と名前、それに術式はちゃんと書いてあるわね、これにアタシの血判を押せばOKと・・・・・」 驚いた事に葛葉は人間の使う忍術に非常に精通していた。 どうやって覚えたのかと聞くと。 『自分で開発して人間に教えた(気紛れで)のもあるし・・・・あとはテキトーに色んな里に忍び込んで忍術書読み漁ったのよ。』 勿論其の中には木の葉も入っている。 そう事も無げに言われた時は綱手も『うちの里の警備って・・・・・・』と嘆いていた。 「ほい、これで契約成立ね」 「ありがと」 「じゃ、帰りましょうか?」 「あ、ちょっと待って」 其の侭踵を返そうとした葛葉を少し引き止めると、ナルトは3つの・・・葛葉が精一杯の想いで作った墓の前にしゃがみ込むと、そっと手を合わせた。 「怨むなとは言わない。憎まないでくれ、とも言えない。 「ナルト・・・・・・・・・ありがと」 ・・・・・少しだけ、彼女の瞳が潤んでいたのは内緒である。 「お帰りナルト」 にやにやしている綱手 こういう時の彼女は絶対悪い事を考えている!! 「いい話と悪い話が一つずつあるんだけれどどっちを先に聞きたい?」 「じゃ、じゃあ悪い話の方を・・・・・・・」 恐る恐る言う。 だってこういう時は悪い話から片付けるものだもの。 「この間言ってた休暇話、駄目になったわ・・・・・・」 「な、何でだってばよ!俺疲れてんのに!!」 「しょうがないだろ!!お前、ここ数日いないし、ネジは使いモンにならなくて高ランクの依頼溜まってんだから!!ちったあ働いて貢献しな!!」 「ぶー、分かったよ、じゃあいい話って何?」 頬を膨らませながらもしぶしぶ納得したナルトに綱手は一枚の書類を差し出した。 「木の葉上忍星宮ナルト、6代目火影候補への正式就任を命ずると共に、5代目としてこの事を心より祝う。まぁいきなり火影になるっていっても無理だからしばらく勉強してからってことになるだろうけどね。」 「は・・・・・・・・・?」 思わず呆けてしまうのも決してナルトのせいではないだろう。 何しろ今まで散々モメたのだ。 自分の火影候補就任は。 「なんで・・・・・?」 金魚みたいに口をパクパクさせてしまうのも決してナルトのせいでは・・・・ない。 「今まで反対していた勢力がね、急に態度を改めたのさ」 「え・・・・・・」 「まぁ、葛葉の話に色々考えるものがあったんじゃないかい?私も今回の事では色々考えさせられたし。お陰でこんな物が手に入ったよ」 その手にある書類は、上層部の署名が入った同意書。 我々は星宮ナルトの6代目火影就任を歓迎する。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・よかったじゃないか、さ!!立派な火影になる為にも頑張って任務こなしてきな!!」 バシバシと背中を叩く綱手に押し出されるようにして、ナルトは火影執務室を出て行った。 「・・・さてと、入っておいで、黒金」 ナルトが出て行った後、綱手は鈴鹿の名を呼ぶ。 彼女はナルトが入ってきた入り口とは別の戸口から音を立てる事も無く入ってきた。 「失礼いたします」 そうして執務机に座る綱手と対峙する。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 非常に重苦しい空気が流れる。 綱手が何を言いたいのかは鈴鹿も見当が付いているであろう。 彼女は木の葉に非常に馴染んでいるとはいえ(馴染み過ぎだ!との声も上がっているが)本来は鋼の里、つまり他国の忍なのである。 その彼女が。 ナルトの中に九尾が封じられているという事実、木の葉の中ですら 問題は彼女がその情報をどの様に扱うかという事。 鋼の里は同盟国であるから万が一の時の外交カードとして秘め置いておく、というならまだ良い。 だがもしも・・・・ 「私が他国に情報を売るかもしれない。ソレが心配なんですね?」 ガタン!! 綱手が椅子を蹴倒して(酷ぇ)立ち上がる。 「分かっています。昨日は何も起こらなかった、私は何も見なかった。それでいいでしょう?」 そんな綱手に対して鈴鹿は冷静そのものといった対応をした。 「そうしてくれると助かるよ。」 ほっとして椅子に座り込む綱手に鈴鹿は小さく笑う。 「まあ、どうせ報告したところでうちの里長だったら、『それがどうしたぁ!』ってなるだけだと思いますけどね」 「は?」 ポカンとする綱手に更に笑みを深くして、 「うちの里は皆職人気質なんです。政治や駆け引きよりも新しいものを作り出す事が好きなんですよ。忍としては失格かもしれませんが。・・・・・でも私は・・そんな故郷が好きです。」 確かに。 あの里長ならありえるかもしれない。 綱手は同盟条約締結の時に一回会ったきりだった鋼の里長の政治家というよりは、いかにもどこかの親方然とした風体を思い出していた。 つまる所、技術力はあってもドロドロした事に向いていない人種達なのだ。 そんなかれらが、同盟国の弱みを握ったからといってどうこうしようとはしないだろう。 「でも。木の葉の事も第二の故郷だと思っています。…だから、どちらの利益にもならないようなことはしませんよ」 そしてにっこりと笑った彼女のこの言葉。 知らなかった 綱手はいつもは感情をあまり露にしないこの少女の本音を初めて聞いた気がした。 「……ありがとうね、」 鈴鹿は何のことやら、というとぼけた表情で笑っていた。 火影邸を後にしたナルトは人目に付かないところまで来ると、大きくガッツポーズを取った。 「・・・遂に認められた・・・!」 本当に嬉しそうである。 「良かったわね。コレじゃアタシが力貸す必要なんて無かったかしら?」 ある意味彼女のお陰のような物であるのだが、彼女にはそういう考え方はないらしい。 「ま、コレで火影に向かってまっしぐらね。約束、忘れんじゃないわよ?」 「分かってるよ、葛葉ねぇv」 ズゴンっ 不意打ちのとんでもない呼び方に彼女は派手にスッ転んでしまった。 ・・・余談ではあるが、四足の動物が転ぶと結構マヌケな図になる(参照;KUROKUの愛犬) 「ななななな////////何よ!?葛葉ねぇって!?」 顔を紅くし、どもりながら喋る彼女にナルトはしれっと一言。 「今考えたら九尾って何だかんだいって俺の事助けてくれていたし。父親代わりみたいなもんかなって。だったらその娘は姉さんって呼ぶべきだろ?」 「////////」 「ダメ?」 まるで小さな子供のような不安げな表情に、葛葉の中の姐さん根性が染み付いた母性本能(結構私利死滅な文章だな)が刺激されない筈があろうか、いや筈が無い(反語表現) 「あーーーー!!もう!分かったわよ!好きに呼びなさい!!」 後に彼女は「18にもなってあんな顔が似合うのって反則よね」と愚痴を零すのだがその事は今は全く関係ない。 「これからよろしく葛葉ねぇ」 「こちらこそ」 こうしてナルトの新生活はもう一人(一匹?)の家族を迎えてスタートした。 ****おまけSS 『公約!私星宮ナルトが火影になった暁には妖魔達との共存共栄を目指します』 ナルト「ふぃー、ついにポスター完成!」 鈴鹿「ナルトさんにも公約ができましたか、良かったですね」 ナルト「まぁな。公約って政治家の目標みたいなもんだしな」 鈴鹿「その目標を実現できてる政治家は現実にはいませんが」←毒舌モード ナルト「・・・・・それは言っちゃいけないお約束だってばよ(汗)ところで、鈴鹿は目標とか無いのか?」 鈴鹿「私ですか?そうですね、私はやっぱり鋼特製の拳銃を忍者の標準装備にすることでしょうか」 ナルト「えー?拳銃って撃つの難しいんだろ?」 鈴鹿「そんな事ありませんよ。個人差はありますが射撃の腕っていうのは大体が撃った弾数に比例すると言われているんです。」 ナルト「そうなのか?」 鈴鹿「ええ、そこいくとある程度のセンスやパワーが必要な手裏剣やクナイよりよっぽど簡単だと思います。」 ナルト「へー(感心)」 サスケ「じゃあお前はセンスもパワーも無いから銃にしたんだな」←いきなり登場 鈴鹿「・・・・・・・・・・」 じゃきん☆ ズギャンズガンズギャンズギャン!! ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ みよょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょょん ←? サスケ「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 鈴鹿「・・・・(怖いくらい無表情)うちは上忍はその口を直す事を目標にしたら良いと思います」 ナルト「・・・・・・俺もそうした方がいいと思う(汗)」 今週の銃 ジュニアコルトアーマー・ピアニッシング25口径 サスケ「・・・・・・・・(気絶)」 ↑ 悉く人の地雷を踏みまくる男 **** 葛葉ねぇが遂に味方に。 コレで主人公サイド最強か!?と思ったら残念無念また来週〜♪ 彼女とパワー勝負ならガマ親分やマンダの方が上だし、悪知恵なら大蛇丸よりちょい下? 毒舌なら鈴鹿の方を上にしときたいし。 勝てるとしたら術に対する造詣とチャクラの量くらいなもんでしょーか(駄目じゃんソレ) まあ強力な戦力が増えたって事には変わりない訳でして。 いや、口寄せの巻物ってそんな簡単に作れるものかどうか知りませんがね(汗) ただカカシ先生も自分で育てた忍犬を口寄せしてたし、作ろうと思えば作れる物なんじゃないかなーって。 私は鋼の里は忍者というよりは特別な職人集団というイメージで作りました。 どこかのマンガにあった、旅をする刀鍛冶集団みたいなもんです だから五影や他の忍者集団に比べて政治のゴタゴタにはあまり免疫が無いんですよね。 鈴鹿の毒舌も詰まる所、おべんちゃらが嫌いな嘘がつけない性格が反映されているんです。 でも頭はいいですよ? さて、前編は無事終了いたしましたが、番外編書く気満々です(後編早よ書けや) |
KUROKUさんからいただきました!第9話。
ついに前編完結!一区切りつきました!
スゴイです!お疲れ様でした!
祝☆葛葉との口寄せ契約完了!
やっぱり、葛葉かっこいいですね。
上の連中から嫌われているからといって、自分が所属する集団の総意に反する行動を取るっていうのは難しいですよ!
ナルトにはぜひ、教育改革とか、色々問題山積みで大変だと思うけど、頑張ってほしいです。
6代目火影候補への正式就任も決定したということで。
そうそう。これは言っておかねば。ナルト!オメデトウ!
ナルトは認められるし、葛葉さんは家族になるし、鈴鹿や鋼の里ともトラブルは起きずで、本当スッキリ気持ちよく区切りがついてよかったですvv
2004/9/18