現在午後9時

火影候補であるナルトが忙しいのは分かる。

が、ヒナタも揃って残業だったのは珍しかった―――


****女達のある日常



「はあ〜疲れた」

グッタリした様子で上着を脱いでいる彼を見て、ヒナタは申し訳なさそうに言った。

「ごめんね。私がちゃんとしてなかったから・・・・」

実は彼女の同僚である医療忍者が経理上のミスを冒し、その処理で二人ともこんな時間までの残業となってしまったのである。

「ん、いーよ、大したことにはならなかったんだし」

ひらひらと気にするなと言わんばかりに片手を振る。

「・・・夕飯、私が作ろうか?」

最近では、二人ともナルトの家で食事をすることが多く、食事当番は交代制となっている。
今日の晩飯はナルトが当番だった。

「あ、それならだいじょーぶ。ちょっと待ってて。」

そういって台所に入っていく。

あんな状態でちゃんとした夕飯が作れるのか。

だが、実際ナルトだけではなく、ヒナタもかなり疲れているのだ。

この際そうめんだけでも有難く食べるしかない。

台拭きを持って居間に入り、テーブルを拭く。

「ちょっと運ぶの手伝って」

湯も沸かせない時間だ。

ひょっとするとトーストにバターか。

台所に戻ったヒナタはずらりと並んだ皿に眼を見張った。

焼きナスに蒸し鶏の胡麻和え。牛肉の時雨煮。三色カラーピーマンとトマトのピクルス。

全部、冷蔵庫の中で冷やされていたものだ。


「・・・・・凄いね。コレ全部、朝のうちに用意したの?」

「するかよ。時雨煮は買ってきた奴だよ。」

だが、他のものは全部ナルトが作ったらしい。

「・・・・ナルトってホント、『理想の旦那様』だよね」

思わず言ってしまった。

「は?何ソレ」
「知らない?みんな言ってるよ?」

美形になっている上に冷たい性格のサスケとは違い、人当たりも良く。

加えて男やもめの生活(ちょっと違!!)が長かったために家事は一通りできる上に料理の腕も趣味となった今では見ての通り。

子供受けも好いから、きっと子育てにも積極的に協力してくれるだろう。

すっかり里中の若い女の間では『星宮ナルトは理想の旦那様』が定着してしまっているのだ。

ヒナタも嫉妬の眼で見られたのは一度や二度ではない。

「ふ〜ん」

あまり興味無さそうにご飯を頬張るナルト。

「気にならないの?」

自分はその噂を聞くたびに気が気ではないというのに・・・

もう、ナルトを見ているのは自分一人だけではないのだ。

その事がヒナタを不安にさせる。

しかし・・・

「ん〜別に。俺は俺だし。それに・・・・・」

スッと箸を降ろして上忍の動きでヒナタに抱きついた。

ハッキリ言って能力のムダ使いである。

「ヒナタ一人の『理想の旦那様』でいれば十分だからvv」

「えええええええ!?/////」

ボンっ!!と顔中から湯気を出すヒナタ。

ちょっとは強くなったとはいえ、ウブな所は全く変わっていない。





「まあまあまあ♪らぶらぶねえ・・・・」

『うわわわわわわ!!?』

突如部屋に響いた声に見事に二人はハモって驚いた。

「く、葛葉ねぇ!?・・・えええっとお帰り・・・」

いつの間に帰って来たのやら。

今は初めて会った時のような中間型ではなく、動きやすいようにと小型犬くらいのサイズとなっている。

少々どもりながらナルトは「いらっしゃい」ではなく。

「お帰り」と言うことにしている。

葛葉にとってもここは帰るところであって欲しいから。

「ん、ただいま。」

それに対して葛葉もその好意に甘えているのか、『ただいま』と答えている。

そして小型サイズのまま、テーブルの上に乗り、おかずを食べ始めた。

「むぐむぐ・・・この鶏、なかなかイケるわね。甘みが効いてて」

口をせっせと動かしながら感想を云う。

この人(?)、あっちこっちを放浪しながら食べ歩きをしていたせいか、料理の味に滅法煩い。

ヘタに不味い物を出すと、怒られること必至だ。

が、ナルトの料理は随分と気に入られたらしく。文句一つ云わずに食べている。

それどころかかなり良い評価が下されているのだ。

「ありがとーv、明日の朝はピザでも焼こうかと思ってるんだけど。」

「マルゲリータにしてね。」

すかさずリクエストはしてくるが。

「マルゲリータ?まいったな。モッツァレラの買い置きはあったと思うけど、バジルはどうだったかな?」

とブツブツ言いながら食べかけの夕飯もそのままに材料の確認の為に台所へと戻っていった。

ナルトも何だかんだ云いつつも、葛葉のリクエストには答えている。

ひょっとすると巷で囁かれている『葛葉はナルトに餌付けされている』という噂は本当なのかもしれない。



「ヒナタも心配性よね〜」

「はい?」


突然意味不明な事を言われ、ポカンとするヒナタ

「あんだけ愛されてるんだから自信もてばいいのに」

「な、ななななななななな……!」


その言葉を言った途端、ボンッと顔から湯気を吹き出して固まってしまったヒナタ。

「き、聞いてたんですか……・?」

「聞いてたわよ、バッチリと」

「//////////」

「あのね」

ビシッと尻尾(何故?)を突き出して葛葉は言ってきた。

「私、アンタたちと似たよーなタイプの夫婦知ってるけど、万年ラブラブでつりあうとか釣り合わないとか、そんな心配なんて全っ然いらなかったわよ?」

「似たような夫婦?」

「ええもう……見てる方がいい加減にしてくれって叫びたくなるくらい…・・」

「はぁ…・・」

よっぽどその夫婦に当てられていたのか、げっそりした表情で言う葛葉にヒナタは生返事しか返せない。








「それより、お礼を言いたかったのよ。ありがと」

「え?お礼?」

きょとんとしているヒナタに対して、葛葉は苦笑して見せた。

「あの子達のお墓に花、持ってってくれたの、ヒナタでしょ?」

そういえば10月10日、木の葉が九尾に襲われた日でもあり、ナルトの誕生日でもある日が近い。

つまり、葛葉の弟妹達の命日も近いと思ったので、ヒナタは彼らの墓に花を持っていったのだ。

「匂いですぐにわかったわ」

「そんな、大した事はしてません。・・・・そうせずにはいられなかったから・・・」

少し照れたように言うヒナタ。

「・・・・ホントあんたってイイ子ね〜」

そうしみじみと言われるとますます照れてしまう。

「葛葉ねぇ〜、ちょっと少ないけどバジリコあったよ〜」

「ナルト!!」

「な、何?」

葛葉は台所から出てきたナルトにビシッと右前足を突きつけた。

「ヒナタ泣かしたらただじゃおかないわよ♪」

「は?」

「く、葛葉さん・・・・////!」

きょとんとするナルト。顔を赤らめて慌てまくるヒナタ。


そのまま、夜は更けていった。



***おまけSS***

鈴鹿「小姑、嫁を慰める、の巻でした」

葛葉「誰が小姑よ!?誰が!!」

鈴鹿「ナルトさんのお姉さん代わりなんでしょう?」

小姑:配偶者の兄弟姉妹

葛葉「ヴ〜ん・・・分かってるんだけれども、姑ってどうも良いイメージが湧かないのよねぇ・・・」

鈴鹿「・・・・ひょっとしてこの間のドラマ『鬼姑』見ました?」

葛葉「・・・・・・・・・・てへ(図星)」

鈴鹿「(溜息をついて)・・・ではあなたがナルトさんに餌付けされいるという噂は・・・・」


葛葉「嘘に決まってんでしょ。ったく誰よ、そんな噂流したの・・・・・」



「葛葉ねぇ〜ドラ焼きできたよ〜」



ピクッ←耳が動いた!

クルッ←半回転


ズドドドドドドドドーーーーー



「・・・・・・・本当だったみたいですね・・・・・」




後書き

「渡る世間は○ばかり」「羅刹」嫁姑の争いってコワい……けどこの二人(?)は大丈夫!なお話でした。
ついでにうちの嫁姑も仲良しさん。
結構アレって誇張が多いですよね(笑)



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KUROKUさんからいただきました!番外編。

ナルトって本当理想の旦那様ですね〜。
あんな旦那欲しいっ!!
どっかに転がってないかしら〜(無・理☆)

番外編の見所!?
「ヒナタ一人の『理想の旦那様』でいれば十分だからvv」
うわ〜//////
ラブラブカップル〜////
読んでる私までこそばゆくなりましたよ。
いいですねえ。幸せなナルヒナvv

嫁姑関係もバッチリ☆でめでたいです。
理想の夫と理想の妻で嫁のカップリングかあ〜。
よきかなよきかなvv

2004/10/4