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(C)2003
Somekawa & vafirs

『5万回切られた男』

ヤミヨのカラス

【今年の日本経済】

今年の日本経済は、アベノミクスと言う矛盾をはらんだ政策によりバブル再来のような形で立ち直って行くように思えた年だ。
円安株高に支えられ、多くの企業が息を吹き返している。
小生の会社も好調であるが、我、事業部はこの異質で今だ赤字に喘いでいる。
そもそも2年前に、日本の薄型テレビが大コケし、その余波で、我、事業部も少なからず影響を受けた。
韓国、台湾勢の技術力を侮り、国内に大きな工場を作り価格競争に負けたのが一番の原因だ。
その中の1社であるP社は、今年に入り、ようやく息を吹き返したものの、まだ先が見えない経営状況であるのが現状だ。

【霊山歴史館】

さて話しは反れるが、今年11月15日に京都市東山地区にある霊山(りょうぜんと読む)護国神社を訪れた。
11月15日は坂本龍馬の誕生日でもあり命日でもあり毎年、龍馬祭が執り行われる。
攘夷、勤皇問わず、幕末の志士や明治以降の大戦の戦死者を供養している神社だ。
そこには坂本龍馬、中岡慎太郎、龍馬の下僕であった元相撲とりの藤吉の遺体が葬られている。
暗殺当日、龍馬は軍鶏を食えずに暗殺された。
そこで京都市高知県人会の主催により軍鶏鍋が用意され、一番汁は墓前に出し、参加者全員に無料で配られる。
そして、今も、日本は元気であると、墓前で全国から集まった若者による龍馬よさこい踊りが催されるのである。

この霊山護国神社の横に霊山歴史館が建っている。
幕末から明治維新にかけての時代考証や資料の展示などを行っており、大河ドラマの時代考証、資料提供や出演する俳優さんなども訪れる。
初代館長は、P社の創設者。
そして、毎年この日は当歴史館で恒例の講演会が行われる。
今年の講演は2部制で、第一部は、当館の副館長が、“龍馬とジョン万次郎”と言う題目で講演だ。
この副館長はNHKの“歴史ヒストリア”にも出演し時代考証を行ったりする先生ではあるが、講演自体は、毎回余談が多く、話しがアッチャコッチャに飛びまくる。
“どぉわぁ、はっはっはー!”のドヤ顔で煙に巻き、話しを終わらせる癖は昔ながらだが、それでも、最後に話しを旨くまとめるので彼の講演は人気がある。
いつもは2時間の講演であるが、本日は第2部があるため、1時間ソコソコで彼の講演は終了した。

【5万回切られた男】

講演第2部は、その副館長と俳優、福本清三さんとのトークになった。
福本清三さんと聞いてピンとくる方は少ないかもしれないけれど、“時代劇の切られ役”と言われれば、分かる人もいると思う。
東映大部屋上がりで、時代劇を中心に55年間“5万回切られた男”として有名だ。
強面のイメージはあるが、壇上に現れた彼は“時代考証のウンチクは無く、タダ切られてきただけで、先生(副館長)とどんな話ができるか自信ありません。”など非常に謙虚な人であった。
ここ最近衰退している時代劇を非常に憂いている一人である。
トークでは、大部屋俳優の時代劇で階段落ちなどアクションをやっているうちに、台詞のある役をもらった、 その一言を何日も練習して本番に臨んだが、本番になると、いつも遠くにあるカメラが目の前にあったため、頭が真っ白になってその一言が出ず、呻き声だけの切られ役に徹した。など裏話が続く。
副館長から、“切られた時の声出せますよね?“とリクエストされた時の”ヴォォー!“の断末魔の声は、今まで話していた、カボソイ声とは裏腹に、マイクが壊れるくらいの大音量で、さすが”切られ役!“と言うしかないド迫力だ。
トークは、昔の時代劇のスターたちとの絡みの想い出を話すのだが、副館長は“ああ!あの女優、知ってる。ツイッター友達だ!テレビで見たらとっても美人でねぇ”などの自慢話が入り、微妙に話しが噛み合わない。
と突然、“5万回切られた男“が、ボヤキ出した。
5万男:“黄門さんが、終わっちゃいましてぇー!”
副館長:“え!?”
5万男:“黄門さんは、絶対終わらないと信じてたんで、食いっぱぐれないと思ってたんですよ。”
副館長:“なんですかぁ?”
5万男:“P社さんがスポンサー下りちゃったもんっすから。。。。絶対そんなことする会社じゃない。と思ってましたしぃ。。。。 ”
いつもの“ドヤ顔”の副館長は、一瞬にして、“ジェジェジェ顔”に変っていく。
5万男:“時代劇も衰退してきて、このままじゃ小道具さんとか殺陣師さんとか、いなくなっちゃいますよぉ。先生!”

第2部のトークショーは2時から3時までの1時間の予定であった。
会場には福本ファンらしき人が多く参加され、一眼レフでカメラに収める人も多く見受けられた。
しかし、このトークは、あっさり30分で終了してしまった。

お爺ちゃんお婆ちゃんの茶の間の楽しみを消し、時代劇の文化、人的資源の衰退を招き、しかも何万人もの首を切ってきた大々会社が、5万回切られた一人の男にあっさりと切り捨てられちゃったのである。
当館、初代館長も、クサバの陰で泣いているやろうに。。。。。

【コツコツと。。。】

素浪人、用心棒、ヤクザなど、大部屋役者として5万回切られた男だが、そのコツコツやった実績が認められ、トム・クルーズの“ラストサムライ”ではトムと共演し、トムからハリウッドに招待されるほどの世界の“kirareyaku”となった。
また、年末からの映画“利休にたずねよ”でも、今までの役柄とは大きく違う天皇役を引き当てる。
台詞は一言だけだそうだ。
しかーも、来年封切の映画で、とうとう主演を演じる。
タイトルは“太秦ライムライト”。

来年の干支は馬年だ。
ペテン師まがいのアベノミクスにより、我ら日本は、龍がごとく飛翔する駿馬となるか、はたまた駄馬となるか。。。。それは分からない。
しかし、コツコツとやっていけば、なんとかなって行くもんである。

ロブロイストの皆さぁーん。来年も酒と音楽を信条にコツコツ頑張って行きましょう!
それでは、良いお年を!

ヂ・エンド

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