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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

気持ちのいい取材

先日「dancyu」(ダンチュー)という東京の雑誌社の取材があった。

数週間前に電話連絡があった。
「『ダンチュー』という雑誌社のEというものですが、今度取材させて頂きたいのですが?」
その雑誌社を知らない僕は「ダンチューなのかランチュー?」なのかはっきりしなかったのであるが、 広告ならともかく取材とのこと、早い話タダで掲載(宣伝)してくれるわけである。当然断る理由などない。 世間には一切取材などお断り、という店もあるらしい。

さてその理由はわからないが「当店は格式のある店、軽々しく載せてもらいたくない。もしくはこれ以上お客が来ても困る」 などなどあるのかもしれないが幸いにして我がロブロイ、低いも高いも敷居など元々無いし、ヒマには自身のある店、 こころよく取材をお受けすることにしたのは当然のことだ。


ところで今回非常に気持ちのいい取材であった。
そこそこの年数を営んでいると、過去に取材を受けた事は、地元誌も含め、まあ何回もある。 中には取材してやってるんやぞ。というような(気)が見えないことも無い。

これは地元誌に限るが以前は取材されると、されっぱなしで雑誌はもらえなかった。

いつ載ったのやら。

まあタダで取材してやったのだから「自分で買え!」ということだろう。
さすがに今は丁寧に送ってくる。


去年この業界で知らない人はいない、ウィスキー・ライターのT氏編集の雑誌の突撃取材を受けた。 T氏とカメラマンほか助手ひとり計3名であるが、突撃だけに普通にお客として来られたわけであるが、 何がしかで何回も写真は拝見しているのですぐに「T様ですね・・・」となった。

それはともかく普通に飲み物を注文されたわけなので、取材が終わり「お幾らですか?」と言われ、つい通常通り頂いてしまった。
しかし、よくよく考えれば、お金を貰いながら取材していただく、というのもこれどんなものかな?と、妙な気がしないでもなかった。


今回の「dancyu」であるが、電話を頂きその後何人かのお客様にその話をしたところ意外と知られており、というより皆さん知っており、 元々は“男の厨房”(男厨)という意味合いから来ている、男性向けの料理本だったようである。

さて当日副編集長のE氏とライター(ノンフィクション作家の枝川氏)とカメラマン(有元氏)と3名で来られた。
副編集長から「取材させていただきます」と雑誌を見せられた。
捲き末に一ページを割き、写真はあえて白黒を一枚だけ、あとは文字のみで実に落ち着き、趣のある紙面となっている。素直に気に入った。

冒頭には連載があり、著者はあの大物思想家、吉本隆明氏の随筆となっている。
説明する必要もないが、作家の「吉本ばなな氏」の親であることは誰でも知るところであろう。

まずは撮影からということであるが、白黒写真ということでカメラは今は懐かしい、ファイダーは上から覗く2眼レフカメラと渋い。
そして取材となったわけであるが、今までとどこかが違う。
というのは取材である限りどうしても「ここのお店のコンセプトは?」とか「お勧めの酒は?」などなど“質問形式”になるが、 今回はほとんど雑談に近かった。
とは言え一応区切り、枝川氏「お酒飲みたくなりましたねえ〜」となった。
ちょっとビックリしたのは今日はこれで取材は終わりとの事。
確かに月刊誌、一ヶ月に一軒掲載とは先に書いたが、それでもその日は我がロブロイ一軒だけの取材なのだそうである。

良く聞くと今回は前日の富山に始まり、金沢、岐阜、名古屋と一日一軒ずつという、なんという余裕というか、さすが中央の雑誌社と素直に感心した。

その週、たまたま地元誌のN出版社のO氏が来られ、その話をしたところ「あの雑誌社ならそうだろう」ということだった。
とにかく良く売れているらしい。

余計なことだが、副編集長と作家と、聞くと何回も個展を開いておられるカメラマンとで、たった一日一軒だけ。
実に贅沢な取材旅行である。


ともかく今回何となく楽しい取材を受けたような気がする。

なんとお土産も頂いた。(チーズケーキだった)
これももちろん初めてのことである。
そしてそれなりに時間も経ち「お幾らでしょう」となったが、気持ちのいい取材、丁寧にお断りさせてもらった。

料理本のなかの一軒だけのページ

「バーテンダーは謳う」

というタイトルもいい。

掲載は数ヶ月先になるようだが、白黒の落ち着いたつくりのページ。
ひょっとしたら初めてかもしれない。
気持ちのいい取材。

素直にありがたいし、素直に楽しみにしている。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。