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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

70歳のウィスキー

しばらく酒について書いていないなあ〜、と思っているところへなかなか面白い記事を見つけました。
北陸中日新聞に載っていましたがそのタイトルや、「世界最古(サイコ)・味も最高(サイコー)」とシャレていました。

さて何かと言いますと、世界最古と称する70年物のシングル・モルトウィスキーが英国スコットランドで3月11日に発売されたそうです。
700ml入り54本限定で、価格は一万ポンド(約135万円)だそうです。 銘柄はというとスペイサイドにある蒸留所、モートラックの物で1938年蒸留樽詰めされ、つい最近まで樽で延々と寝ていた、という事になります。

過去にウィスキーに限らずワインなども含め、100年以上前の物が市場に出た事はありますが、 それはあくまでも100年以上前に「瓶詰め」されたものが偶然見つかった、 というもので「樽」で延々と「熟成」されたもの「70年もの」とは根本的に意味が違います。
記事にもありますが、ウィスキー評論家も「樽で熟成され続けたものとして、これ以上古いものは聞いた事がない」と指摘。
味はというと「デリケートにして新鮮、生き生きとしてフルーティー」という評です。

さて飲んでみたいものですが、まあ、価格も含め難しいでしょうが、仮に手に入ったとしましょう。 一本でシングル約24杯取れます。135万円ですから24で割ると約56000円、 要するに原価で一杯56000円という事になりますので、商売としてお客さまに売るとなると一杯(30cc)少なくても「10万」円以上となります。
この厳しい世、仕入れる立場、飲む立場のひとも、とりあえず「ふ〜っ」とため息だけつかさして頂く事に致しましょう。

古いといいますと当HPの「酒ここにあり」というページに「ブギャナンズ」というブレンド・ウィスキーを紹介しております。
これは我が店をオープンしました頃、あるバーテンダーに頂いたものですが、その時点で「20年も前から店にあった」ということで、 裏のラベルにかすかに輸入業者が読み取れ、連絡してみたところ「確かに昭和30年代に我が社が輸入しておりました」という返事でした。
12年熟成もの、という事でしたのでそれよりもっと古く、昭和20年代という事になります。まだ封も開けずボトル棚に鎮座しておりますが、 仮に昭和20年とすると西暦1945年ということになり、65年前のウィスキー、ということになります。
が、上記の70年熟成物と違い、65年熟成という事ではありません。 とはいうものの、65年も前に作られ、その時代に存在したものが「今ここにある」。
夢を飲むではなく、現実に飲める。 まだ開けておりませんが、いつかですが皆様とゆっくり飲みたいものであります。

ところで先のモートラックといえば、一部のお客様は記憶にあると思います。
もう20年近く前になりますか、1936年物モートラックのシングル・モルトが珍しく入荷致しました。 熟成年数は30年以上という事でしたが、それほど古いにもかかわらずびっくりするほど新鮮かつ引き締まり、抜けも良く、 もちろんしっかり熟成感を味わえる、いいウィスキーでした。
価格は12万円。シングルで原価5000円となります。たまのお祭り、またそうそういつでも飲めるものでもありません。
価格も一杯千円上乗せしただけ6000円でお出し致しました。
約24名の方しか飲めませんので、程よくすぐ無くなったわけですが、飲めないというと、当の僕はというと何せ一本しかありません。 ほんの試飲程度しか当然飲んでおりません。

ところがありがたい事に、僕が飲んでいないであろう事を予測し、Mr・F氏が「マスター、一緒に飲ろうよ、奢るよ」とまあ、 なんとも粋でうれしいお言葉をもらい、しっかり一杯、気持ちは腹一杯頂きました。

お客様に感謝、感謝の毎日です。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。