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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

ブスッー

何回か書いたが食道がんとリンパがんの手術をしてもう十年が経った。
食道は半分切除、リンパ節がんのがん細胞が肥大し、胃とすい臓に付着していたために胃とすい臓も三分の二切り取り、脾臓、胆のうは全摘出となった。
何やらお腹のあたりがスカスカしているような気がしないでもないが、たぶん、気のせいだろう・・・いやちがう。
前にも書いたが残った胃を筒状にし、足りなくなった食道につないでいる。
つなぎ目を内視鏡で見せてもらったが、上手く縫い付けているものである。

ところでその後の生活に支障が無いかというと、当然ある。
まず尾籠(びろう)な話で申し訳ないが、下は緩くなるし、それまで好きだった食べもの、たとえば乳製品とかがだめになった。
またビールなどもチビチビと、なんとも情けない飲み方となった。
ようするに炭酸系に弱くなったのである。
が、ビールなどチビチビと飲るものではない。
豪快にグビッ、ゴクゴクッと掘りこむようにして飲むから美味いのである。
結果チビチビと飲る自分がいやになり、ほとんど飲む事は無くなった。
ま、酒に関してウィスキー他沢山あるので十分満足しているが。
ただ好き好んで食道がんにはなりたくないので、飲み方は優しい飲み方に変わった。(量は変わっていない)

執刀医は東京は国立がんセンターから来てくれ、朝九時に始まった手術、終わったのは深夜12時過ぎだったらしい。
僕が気が付いたのが一時半であった。
間違いなく大手術と言えるだろう。
そのお陰かその後十年、転移・再発もなく今に至っている。
今の医学、医師の方々、また関係者に感謝感謝である。

さてタイトルの「ブスッー」であるが、何の事かというと注射の事である。
正確にいうと採血の事であるが、僕の場合腕が細いせいかとにかくよく失敗される。
今までもこれからもだが、一度がんにかかると年に何回か定期健診なるものが出てくる。
そのたびに内視鏡ないし、レントゲン・CTスキャン他、当然採血もされる。
採血にかかる。
最初から「あら〜どこにしよう、どこが摂りやすいかしら」と迷っている。
そんな時に限ってブスッー「いて〜・・・」「あら〜ごめんなさい」といってまた次の箇所を探すのである。
まあ大概二回目には成功するのであるが、それにしても同じ失敗するにしても、美人看護師、気さくで面白い看護師、普段親切な看護師は失敗してもそんなに痛くは無いものである。
が、それぞれがそうじゃない看護師だと、とにかく数倍痛いのものである。

つい先日の事あるが、前回失敗した看護師がまたやってきた。
またまた迷いながらブスッー、いて〜。
かなり痛かったのでその看護師の容姿レベルを想像していただきたい。
「ごめんなさ〜い」と言いながら選手交代となった。
ちょっとベテランのようである。
その看護師は二回目だから失敗できない、「プレッシャーかかるわ〜」と言いながらブスッー、いて〜・・・とまあ、また失敗。
また選手交代である。
僕は思わず「あなた方、これ笑えないギャグになってるよ」と言った。
三人目は比較的若い。
たぶん若くても外科担当とか内科担当では日々の経験の違いがあるのだろう。
一人目は左手の肘のあたり、二人目は右手の肘のあたり、三人目はちょっと痛いけど手首にしましょう」といいながらブスッー・・・痛くない。
もちろん成功、他の二人もホッとしている。
なぜか僕もホッとしてしまった。
ともかく結果メデタシ、メデタシであった。
それにしても、たかだか採血のために三人の看護師が携わり、三人とも何かすごく大きい出来事をやり遂げた、という安ど感に満ちていた。

これから先、常に採決は付いて回る。
人間大きくならなければならない。
これからは失敗も楽しみにするぐらいの心のゆとりが必要である。 次が楽しみになった・・・

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。