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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

懲りない男

以前にも書いたが、小さいビルの二階にある我が店の階段は狭くて急である。
その急な階段を上がる時に落ちる人はいないが、降りるときが問題である。
なんせ酔いも回っている。
がしかしあまりに急なせいか、酔っ払いなりに、「オッ・挑戦的な階段だな、なにくそ」と気を引き締めるのか、過去30年の間に落ちた酔っ払いは二人しかいない。

一人は名古屋から出張のおり、たまたま我が店に仲間三人で来られた。
「美味い、お代り」を繰り返し、その人はふっと立ち上がり、仲間に「ちょっと酔いを醒ましてくる」といってドアを開け階段を降りて行ったのはいいが、 2〜3段降りた頃だろうか「オオーッ」と声と同時にガタン・バタン・ドスーンと音がした。
まぎれもなく落ちた音である。
急いで階段の下を見ると、頭を下に真っ逆さまである。
お連れの方と抱き起こすと、腕時計は飛び散っていたが、怪我の方はというと肘と額に軽いかすり傷程度ではある。
が、頭から落ちた様子、救急車を呼び、僕も病院まで付いていった。
レントゲンも撮り、先生の「大丈夫ですよ」という声で、まずはやれやれであった。
後日また出張の折「先日はご迷惑おかけしました」と言いながら菓子折りまで頂いてしまった。

さてもう一人はというと、何を隠そう僕である。
「店主が落ちてどうすんじゃ」と言いたいが事実である。
常連のF氏とシコタマ飲み、看板となり一緒に帰ろうとなった。
私服に着替えF氏が先に降り、僕はドアに鍵をかけ、階段を降りて行った。
が、あと4〜5段という時に足がもつれ、下の道路へダイビングしてしまった。
「アイテテー」と言いながらその場はタクシーで帰り、寝てしまった。
次の日右手首がパンパンに腫れている。
近くの整形外科に行くと見事に折れていた。
それからギプスのバーテンダーとなってしまったが、あまりカッコいいものではないので別な病院に行き、ギプスはまだ二週間しか経っていないが「もう一カ月経った」と嘘を言い、無理やりギプスをはずしてもらった。
いずれにしろ間抜けなバーテンダーである。

そのバカなバーテンダーにはこんな事もあった。
その日もいつものように飲み過ぎた。
さあ帰ろうとドアに手を掛けいつものように手前に引くと、ドアの角が額にガツンと当たってしまった。
普通ドアは人が出入り出来るぐらいに開ける。
そして出る。
がその時は酔っているからだろう、何やら目測を誤ったのだろうか、ドアを引くと同時に頭から出ようとしたのである。
まだ十分開いていないのに出ようとする。
当然ドアに頭がぶつかる訳である。
次の日右目の周りに紫色のクマが出来ていた。
これまたカッコ悪いので、嫁さんのファンデーションをかり、何とかごまかしながらの一週間となった。

今度はつい最近の事である。
もともと過去の手術により胆のうも全摘している。
胆のうがないと鉄分の吸収が悪いらしく、よって立ちくらみとか貧血ぎみになる。
そこへ持ってきていつもの酔っ払い。
あるお客様が帰った。
僕はいつものようにカウンターを拭き、イスを整えようとした。
とその時、イスを持ったままバランスを崩し、フラフラッと床へずっこけてしまった。
またアイテテーである。
どうやら右わき腹を打ったようである。
次の日起きようとするとズキーンときた。
やっと起き上がり歩こうとすると、またズキーンである。
嫁さんに言うと「またー」と言いながら病院行ってきたら、と言ったが僕は「アバラなんて病院に行ってもちょっと保護するくらいだろう」といい、行かなかった。
たぶん2〜3本折れているか、軽くてもヒビが入っているのだろう。
たまたま歯医者さんで貰った痛み止めがあった。
その痛み止めを飲みながらの仕事となったが、それでもかなり痛みはあった。
ちょうど二週間が過ぎた頃のある日、あの激しい痛みがスーと消えた。
なぜかホッとした瞬間であった。 一カ月を過ぎ、まだ痛みを感じながら今書いているが、さてそろそろ何かまとめなければいけない。

が、この懲りない男にまとめる言葉など、ない・・・。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。