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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

手打ち蕎麦!!!

何を今さら、と言われそうであるが最近はとにかく麺ブームのようである。
空前のラーメンブームでもあり、今書いているこの時もたまたま「北陸ラーメン博」をやっているようである。

たまたま観てしまったが、「讃岐うどん」など映画まで出来た。
北陸だと氷見うどんだろうか。讃岐の熱々にくらべ、氷見うどんの場合、冷やしで食べる方がツルツルッと合っているような気がする。

また以前はあまり聞かなかったが、“手作りパスタ”も珍しくなくなった。
僕も胃が無くなってから、麺の比重が非常に高くなり、冷凍讃岐うどんに始まり、そうめん、パスタ、ラーメンのホット麺用・冷麺用、蕎麦の乾麺・市販のざるそば用、他にサラダ用パスタ、みそ汁用そうめん、とまあ手短に入るものは大概そろっている。
もちろんインスタントラーメンも何種類かある。

ところで「手打ちそば」であるが最近ちょっと面白い体験をしたので書いてみよう。なぜかお寺さんの話になる。

先日テレビを見ていると、たまたま羽咋にある妙成寺を取材していた。
それはりっぱな五重塔がある。もちろん重要文化財であり、日蓮宗の北陸本山とのこと。
金沢に長らく住んでいながら一度も行った事がなく、これは行かねば罰が当たると思い、嫁さんと行ってきた。 つい先日までの「猛暑・酷暑」の時である。

あの気多大社を過ぎ、しばらくすると右側のちょっとした高台に五重塔が、まるで山水画のように建っている。国道からすぐである。
十分な広さの駐車場があり、車を止め拝観料500円を払うと目の前に堂々と五重塔が建っている。
目の前で観ると、なるほどりっぱなものである。能登半島地震でもびくともしなかったらしい。改めて先人の知恵はすごい。
入ってすぐ左側に日本の国歌「君が代」にも出てくる「さざれ石」が二つデ〜ンと置いてある。これは実に珍しいもので、ぼくも初めて観た。
一通りみて回り嫁さんと「ん、ん、久しぶりにいい物を観た」と言いつつ車に乗ると、ついでにといっては失礼だが、気多大社も久しぶりに参拝してきた。

さて、先の「手打ち蕎麦」の話になる。
帰りの車の中で、よくよく考えると、能登の社寺のなかで、あの曹洞宗の総本山「総持寺」も未だ行っていない事に気づき、こりゃあ行かねば」ということで、次の日曜日に行くことにした。

能登有料道路終点から門前へ。
総持寺通りに入ると能登半島地震で全壊した家屋はすっかり新しく建て替えられたようで、新築が目立った。
さて拝観料、妙成寺より100円安く400円を払い中に入ると、それは重厚な建物が沢山ありさすがに総本山だ。 といっても(明治31年に焼けたため、本山は横浜の方へ移ったらしいが今は「祖院」となっているらしい)とはいえ元総本山、どの建物もりっぱなものである。が、やっぱり2007年の能登半島地震の被害は大きかったようだ。

ほぼすべての建物がヒビ割れ、壁のズレ、傾き等、傷痕は3年半経っても痛々しい。 費用の事もあるのだろうが、土台、土壁、岩壁なども含め、全体が重厚なため、安易に修復は難しいのだろう。
いつか全て修復された状態を是非観たいもんであるが、いつになるのかちょっと想像できない。ちょっと複雑な参拝になってしまった。

さて時間を見ると午後三時、まだまだ暑いというより、熱い。30度は軽く超えているはずだ。
其の熱い総持寺を出ようとすると、出口というより境内になるのだろう手打ちそばの看板に気づき、これはちょうどよい、嫁さんといそいそと入った。
入ってすぐ気付いたというより、嫁さんとおもわず顔を合わした。

とにかく外は暑かったが店の中も暑い。みるとクーラーは動いていない。
天井に一機、むかし円を画くように回る年代物の扇風機が、カタカタと音を立てながら回っている。 もちろんお客は誰もいない。
よくみるとむかしよく見た独立した洋服ダンスのようなクーラーが隅に置いてあるのだが、30度を超える日でも動かしていないという事は、もう何年も前に壊れたままなのであろう。 テーブル席の奥に衝立があり、座敷もあるようだが、そこで主人らしきおじさんが昼寝をしていた。

壁に「親子どんぶり700円」とか「天ぷらうどん」等を書いた紙がべたべたと貼ってあり、それも茶色く煤けており、いつ書かれたものかわからない。
そのなかに入口で見かけた「手打ちそば」があったが、何故か手打ちそばとは書いていない「ざるそば900円」とある。
「ほほう・・」と複雑に感心?しながら、もはや二つ注文する気もなれず、ひとつはとりあえず一番安いうどんを注文した。それでも600円だったが。
しばらくして運ばれてきたが、そのころにはもはや世間にある、ある種神経質そうな頑固おやじが打つ「手打ちそば」は頭の中からすっかり消え去っている。 嫁さんも僕も。
蕎麦と、うどん以外の話をしながら、モクモクと食べた。
ここは総持寺、残したら罰が当たる。

さあ、我が家に帰ろう。
車の中で苦笑いしながら、このこだわり麺ブームの中で、なかなかの楽しい、としか言いようがない経験をした。
という話でありました。
皆さん、機会がありましたら是非寄ってみてください。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。